デュー・ドロップ・イン

デュー・ドロップ・インの歴史

デュー・ドロップ・イン（Dew Drop Inn）は、米国ルイジアナ州ニューオーリンズに存在した文化的な拠点の一つです。このライヴハウスは、1940年代から1960年代の間に多くの著名なアーティストたちが集い、黒人音楽の重要な中心地として知られていました。最初は理髪店として1939年に開業されたこの場所は、次第にバーやホテル、理髪店を併設するようになり、多彩なエンターテイメントの場へと成長しました。

開業からの拡張

デュー・ドロップ・インの起源は、ビジネスマンのフランク・ペイニアがセントラルシティに開店した理髪店にさかのぼります。当時、ニューオーリンズでは人種隔離政策により、黒人ミュージシャンの宿泊場所が限られており、多くの著名なアーティストたちがこのホテルに宿泊することになりました。1945年には「グルーヴ・ルーム」として知られるダンスホールが完成し、エンターテインメントの系譜が広がっていきました。レイ・チャールズやリトル・リチャードといったスターたちもここでパフォーマンスを披露し、トミー・リッジリーやアラン・トゥーサンなど地元アーティストたちのキャリアのスタート地点ともなりました。

多彩なパフォーマンス

デュー・ドロップ・インでは、ダンサーやコメディアンが舞台に立ち、さまざまなアーティストがライヴパフォーマンスを繰り広げることが常でした。併設されたハウスバンドがサポートし、会場を盛り上げました。特に1960年代にはゴーゴーダンスの流行があり、ゴーゴーダンサーたちが追加の魅力を提供していました。

全盛期から衰退へ

しかし、1960年代半ばからはデュー・ドロップ・インの盛況が徐々に減退していきました。1964年に人種隔離をを廃止するジム・クロウ法が撤廃されたことで、黒人客が自由に他の店舗を利用できるようになり、デュー・ドロップ・インは特別な場所でなくなってしまったのです。さらにその頃、フランク・ペイニアは健康が悪化し、経営に十分なエネルギーを注ぐことができなくなりました。1960年代末にはダンスホールが閉鎖され、収益を見込めるホテル事業に注力するようになりましたが、1972年にペイニアが癌のために亡くなると店は閉館しました。

閉店後の状況と再生

デュー・ドロップ・インはその後、長らく放置状態となり、メンテナンスもされていませんでした。2005年にハリケーン・カトリーナが襲来した際、建物は大きなダメージを受けましたが、倒壊を免れました。2010年にはルイジアナ歴史的建造物協会がこの建物を危機に瀕した史跡として指定し、ペイニアの遺族が再生に向けた活動を開始しました。2021年、デベロッパーのカーティス・ドゥーセ・ジュニアがブティックホテルやコンサート会場に再生する計画を発表し、2022年には改修工事が始まりました。

再開と現代

2024年には改装が完了し、最初のコンサートが開催されました。招かれたのは、1960年代にデュー・ドロップ・インで演奏したアーマ・トーマスとディーコン・ジョンであり、歴史的な場所が再び息を吹き返したことを示す重要な出来事となりました。再開されたデュー・ドロップ・インは、ニューオーリンズの音楽の歴史を尊重しつつ、新たな未来へと歩みを進めています。

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