デラルツ・ツル

デラルツ・ツルは、1972年3月21日、エチオピアに生まれた傑出した女子陸上競技選手です。彼女は、同じく陸上界のスターであるケネニサ・ベケレを輩出したベコジ村の出身です。

彼女のキャリアにおける最大の輝きは、オリンピックの10000メートル競走でした。1992年のバルセロナ大会では、この種目で金メダルを獲得。これはエチオピアの女性として初めてのオリンピック金メダルという歴史的な快挙であり、瞬く間に彼女は国民的な英雄となりました。その影響は大きく、彼女の名前「デラルツ」を子供に付ける家庭が相次いだほどです。続く1996年のアトランタ大会では惜しくも4位に終わったものの、1998年の出産というライフイベントを経て競技に復帰。見事に調整を成功させ、2000年のシドニー大会では再び10000メートルで金メダルを獲得しました。この時の記録はオリンピック新記録でした。シドニーでは、開会式でエチオピア選手団の旗手も務め、その存在感を示しました。さらに、2004年のアテネ大会でも銅メダルを獲得し、三大会連続で10000メートルでのメダル獲得という偉業を達成しました。

彼女はトラックだけでなく、より長い距離のマラソンにも挑戦しました。2001年には世界の主要なマラソン大会であるロンドンマラソンと東京国際女子マラソンで優勝し、その対応力と持久力を世界に示しました。特に印象的なのは、2009年に37歳というベテランの域でニューヨークシティマラソンを制したことです。これは、長きにわたる彼女のトップアスリートとしての持続力と不屈の精神を証明するものでした。

競技生活を終えた後も、彼女は陸上界への貢献を続けています。2018年にはエチオピア陸上競技連盟の会長に就任し、指導者・運営者としての道を歩み始めました。また、国際的な交流にも積極的に関わっています。2019年には日本を訪れ、当時のスポーツ庁長官との会談を行いました。加えて、2020年東京オリンピックにおいてエチオピアのホストタウンとなった茨城県笠間市を視察し、地元の中学生たちに陸上競技の指導を行うなど、次世代の育成やスポーツを通じた国際理解促進にも力を注ぎました。

こうしたスポーツ振興や国際親善への長年の貢献が認められ、2023年秋には日本政府より外国人叙勲において旭日小綬章が授与されました。これは、「スポーツを通じた日本・エチオピア間の友好親善に寄与」した功労によるものです。

デラルツ・ツルは、その輝かしい競技実績はもちろん、出産を経て再び世界の頂点に立つ不屈の精神、そして引退後の指導者・運営者としての活動、さらには国際親善への貢献を通じて、世界中の人々にインスピレーションを与え続ける存在です。

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