デリゲート (プログラミング)

デリゲートとは

デリゲート（delegate）は、主にC#やVisual Basic .NETなどの.NET言語に備わっている機能で、メソッドへの参照をオブジェクトとして扱うための仕組みです。デリゲートは、オブジェクトインスタンスへの参照とメソッドへの参照をペアにしてカプセル化する役割を持ち、C/C++の関数ポインタに似ていますが、よりオブジェクト指向で型安全な特徴があります。

デリゲートの概要

.NET Frameworkでは`System.Delegate`クラスが定義されており、このクラスを基にデリゲート型が作成されます。これにより、メソッドを直接呼び出すのではなく、デリゲートを通じて間接的に呼び出すことが可能になります。

デリゲートは、Object Pascal（Delphi）のメソッドポインタや、Microsoft Visual J++のデリゲートをさらに発展させたものです。C++の関数ポインタと比較すると、デリゲートはオブジェクトとして扱えるため、メソッド単位のコンポジション（合成）が容易になります。

デリゲートの主な用途

デリゲートは、主にイベント処理での活用が想定されています。イベントが発生した際に実行する処理（イベントハンドラ）をデリゲートとして登録することで、柔軟なカスタマイズが可能になります。Javaなどでインターフェースを利用したイベント処理と比較して、以下の利点があります。

デリゲートで参照されるメソッド名を自由に定義できる。
インターフェースの実装やスーパークラスの継承を必要としない。

C#におけるデリゲート

C#では、複数のデリゲートを結合したり分離させたりする機能（マルチキャストデリゲート）が備わっています。また、`event`キーワードを使用することで、デリゲートへのアクセスを制限し、安全なコード記述を支援します。

マルチキャストデリゲート

`+, -, +=, -=`演算子を使ってデリゲートを結合・分離できます。これにより、一つのイベントに対して複数の処理を登録することが可能です。

`event`キーワード

`event`キーワードで修飾されたデリゲートは、外部から直接呼び出すことができません。イベントのサブスクリプション（購読）は`+=`演算子と`-=`演算子のみで行うことができ、イベントの誤ったクリアを防ぎます。

非同期デリゲート

デリゲートは、スレッドプールを利用して非同期で実行することもできます。これにより、時間のかかる処理をバックグラウンドで実行し、UIの応答性を保つことができます。

C#でのデリゲートの例

以下は、C#でのデリゲートの基本的な使用例です。

csharp
delgate int SomeDelegate(string str);

class MyClass
{
public int MyMethod(string str) { / ... / }
public static int MyStaticMethod(string str) { / ... / }
}

MyClass obj = new MyClass();
SomeDelegate d1 = new SomeDelegate(obj.MyMethod);
SomeDelegate d2 = new SomeDelegate(MyClass.MyStaticMethod);

匿名メソッドとラムダ式

C# 2.0以降では、匿名メソッドを使用してインラインでメソッドを記述できます。C# 3.0以降では、ラムダ式を使用してさらに簡潔に記述できます。匿名関数は外側の変数にアクセスできるため、クロージャを実現できます。

csharp
// 匿名メソッド
SomeDelegate d3 = delegate(string str) { return str.Length; };
// ラムダ式
SomeDelegate d4 = (str) => str.Length;

デリゲートの実行

デリゲート型オブジェクトは、通常のメソッドのように直接実行できます。

csharp
int result = d1("test");
// または
int result = d1.Invoke("test");

イベントとデリゲート

デリゲートは、イベントと組み合わせることで真価を発揮します。イベントは、デリゲートを公開し、イベントハンドラの登録と実行を管理します。

csharp
public event SomeDelegate SomeEvent;

// イベントハンドラの追加
SomeEvent += new SomeDelegate(EventHandler1);
SomeEvent += new SomeDelegate(EventHandler2);

// イベントの発生
if(SomeEvent != null) SomeEvent("event");


イベントハンドラは登録された順序とは関係なく実行されます。`event`キーワードで修飾されたメンバーは、クラス外部から直接再代入や呼び出しはできません。

P/Invokeとデリゲート

プラットフォーム呼び出し（P/Invoke）を利用する際、デリゲートは既定でアンマネージ（ネイティブ）の関数ポインタに変換されます。P/Invokeでデリゲートを渡す場合は、デリゲートがガベージコレクションにより回収されないように注意する必要があります。

その他の言語のデリゲート

D言語: 関数オブジェクトとして`function`と`delegate`があり、ラムダ式を使って無名関数を記述できます。
Java: バージョン8でラムダ式とメソッド参照が導入されましたが、マルチキャストデリゲートに相当する機能はありません。
C++/CLI: .NETのデリゲートをサポートしますが、C#と比較してコードが煩雑になる場合があります。
C++/CX: ネイティブ言語拡張ですが、デリゲートをサポートしており、イベントハンドラーの割り当てに使われます。
* Objective-C: デリゲートはデザインパターンとして採用されており、プロトコル（インターフェース）を通じてイベント処理をカスタマイズします。

まとめ

デリゲートは、.NET環境において、メソッドを柔軟に扱うための重要な機能です。イベント処理や非同期処理など、様々な場面で活用され、効率的なプログラミングを可能にします。

詳細な情報や具体的な実装例は、公式ドキュメントや関連書籍を参照してください。

もう一度検索