デルビー・ディ・シチリア

デルビー・ディ・シチリア（イタリア語: Derby di Sicilia、英語: Sicilian Derby）は、イタリア南部に位置するシチリア島において、パレルモFCとカターニアFCという二つの主要なサッカークラブが繰り広げる伝統的なダービーマッチです。この対戦は、単なるスポーツイベントを超え、島内の二大都市間の長年にわたるライバル関係を色濃く反映しています。

都市の背景

対戦する両クラブは、それぞれシチリア島の中心的な都市を拠点としています。島北部ティレニア海に面するパレルモは、約67万人の人口を擁するシチリア島最大の都市であり、その歴史的・文化的中心地としての地位を誇ります。一方、島東部イオニア海に面するカターニアは、約30万人の人口を持つ第二の都市であり、エトナ山の麓に広がる活気ある商業都市です。こうした地理的な隔たりや都市規模、あるいは歴史的な背景が、両都市およびクラブ間のライバル感情を育んできました。

歴史的な対戦

シチリア島を代表するダービーであるにもかかわらず、パレルモとカターニアはリーグの異なるカテゴリーに所属している時期が多く、トップリーグやそれに準じる舞台でのリーグ戦での対戦回数は約60回と比較的多彩ではありません。しかし、非公式な親善試合やプレシーズンマッチでは度々顔を合わせています。

リーグ戦における両者の初めての公式対戦は1936年11月1日、パレルモで行われたセリエB（当時の2部リーグ）の試合で、結果は1対1の引き分けでした。セリエA（1部リーグ）の舞台での初対戦はさらに後になり、1961年9月17日にカターニアで開催され、こちらも0対0のスコアレスドローに終わっています。

特筆すべき出来事：2007年の悲劇

デルビー・ディ・シチリアの歴史において、最も暗く、そして影響力の大きかった出来事として、2007年2月2日にカターニアのホームスタジアムで発生した暴動が挙げられます。この試合中および試合後に、スタジアム内外で両サポーター間による大規模な衝突が発生しました。この悲劇的な事件により、警察官1名が殉職し、100名を超える人々が負傷するという未曽有の事態となりました。この衝撃的な出来事を受けて、当時のイタリアサッカー連盟会長であったルカ・パンカッリ氏は、イタリア国内で開催予定だった全てのサッカー関連イベントの無期限延期を即座に決定し、イタリアサッカー界全体に大きな波紋を広げました。

その後の影響と経緯

2007年の暴動以降、デルビー・ディ・シチリアを含む一部の危険視されるダービーマッチでは、安全確保のためアウェーサポーターのスタジアムへの入場が長期間にわたり禁止される措置が取られました。しかし、対策が講じられる中で状況は改善に向かい、2010-11シーズン、2010年11月14日にパレルモのホームスタジアムで行われた試合では、約3年半ぶりにアウェーサポーターの入場が試験的に認められるなど、段階的な緩和が見られました。また、2007年12月2日には、カターニアがホームでパレルモを破り、セリエAの舞台で初めて宿敵に対する勝利を収めるという歴史的な瞬間も生まれました。

広義のデルビー・ディ・シチリア

「デルビー・ディ・シチリア」という言葉は、文脈によってはカルチョ・カターニア対パレルモFC戦以外の対戦を指すこともあります。例えば、1990年代後半にセリエC1（当時の3部相当リーグ）に所属していたカターニアのもう一つのクラブ、アトレティコ・カターニアとパレルモFCの対戦も、広義にはデルビー・ディ・シチリアに含まれます。この両クラブは5シーズンで合計10回対戦しました。特に1999-2000シーズンと2000-01シーズンには、パレルモ、カルチョ・カターニア、そしてアトレティコ・カターニアのシチリア主要クラブが3クラブともセリエC1でしのぎを削るという珍しい状況も発生しています。

さらに広義には、シチリア島第三の都市メッシーナに本拠を置くFCメッシーナを加えた、パレルモ、カターニア（カルチョ・カターニア）、メッシーナの三すくみの対戦も「デルビー・ディ・シチリア」と呼ばれることがあります。これらの対戦も含め、シチリア島におけるサッカーのライバル関係の奥深さを示しています。

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