デンデラ (小説)

デンデラ

『デンデラ』は、佐藤友哉による日本の小説で、2009年に『新潮』に掲載されました。2011年には映画化もされています。この作品は、姥捨て山伝説を題材にしており、村の掟によって山に捨てられた老女たちが生き延び、「デンデラ」という共同体を形成し、村への復讐を計画するという物語です。しかし、その過程でヒグマに襲われ、生死をかけた壮絶な戦いを繰り広げることになります。

書評家の香山二三郎は、本作を柳田国男の『遠野物語』や吉村昭の『羆嵐』のパロディとしながらも、捨てられた老婆たちの悲劇を通して現代社会の矛盾を抉り出す寓話であると評価しています。

映画

2011年6月25日に公開された映画『デンデラ』は、同じく姥捨山伝説をテーマにした映画『楢山節考』で知られる今村昌平監督の息子である天願大介が監督を務めました。撮影は、雪深い山形県庄内地方で1ヶ月半に渡って行われ、その過酷な環境が作品にリアリティを与えています。興行収入は2億4000万円を記録しました。

山形のロケでは、出演女優たちは全員ノーメイクで、ぼろぼろの衣装を身にまとい撮影に臨みました。衣装の下にカイロを貼っても効果がないほどの寒さで、猛吹雪によってテントが飛ばされてしまう日もあったという過酷な状況下での撮影だったようです。

あらすじ（映画版）

物語は、雪深い寒村に住む老婆・斎藤カユが、口減らしの掟である“お山参り”(姥捨て)によって山へ捨てられる場面から始まります。息子に背負われて山へ向かい、お参り場で降ろされたカユは寒さで意識を失いますが、数時間後には温かい屋内にいました。そこは、数年前に姥捨てされた同じ村の老婆たちが暮らす「デンデラ」と呼ばれる場所でした。

デンデラの長である三ツ星メイは、姥捨てされた後に必死に生き延び、他の老婆たちとデンデラを築いたことをカユに話します。デンデラでの生活が始まる中、メイをはじめとする多くの老婆は、村の男たちへの復讐に燃えていましたが、反対派の椎名マサリは襲撃に異を唱えます。カユはどちらの意見が正しいか判断がつかないまま、メイが復讐を強行することを決める。

しかしある晩、デンデラは腹を空かせたクマの親子に襲われます。メイの指示で老婆たちはクマを退治することになり、カユも武器を持って立ち向かいます。激しい戦いの末、母グマを撃退し子グマを仕留めることに成功しますが、10人ほどの犠牲者が出てしまいます。その後、老婆たちは熊鍋に舌鼓を打ち、村にいた頃の歌で勝利を祝います。満月の夜、カユはメイたちと共に村を襲うことを決意しますが、途中で発生した雪崩によってメイたちが犠牲となり、デンデラには3分の1の住人しか残らない事態となります。

デンデラの長となったマサリは、村への襲撃を辞め、デンデラの立て直しを訴えます。カユもこれに賛同しますが、後日、デンデラに再び母グマが現れます。マサリは自らおとりとなってクマを家におびき寄せ、老婆たちに外から火を放つように指示します。しかし、燃える家を突き破ってクマは逃げ出し、マサリたち数人が犠牲となり、デンデラの住人はカユを含めて5人ほどになってしまいます。覚悟を決めたカユは、老婆たちに別れを告げ、デンデラを襲ったクマを村へと誘導します。村人にクマが襲いかかり、結果的にカユは村への復讐を果たすことになりました。

キャスト

斎藤カユ - 浅丘ルリ子: 姥捨ての掟を受け入れ、極楽浄土へ行くことを望んでいたが、老婆たちに助けられデンデラの住人となる。デンデラでの生活やクマとの闘いを通じて、仲間思いで勇敢な性格に変化していく。
三ツ星メイ - 草笛光子: デンデラを作った長老的存在。姥捨てを恨み、村への復讐を企てる。
椎名マサリ - 倍賞美津子: デンデラの平和主義者。過去に辛い経験をしており、貧困が全ての原因と考えている。村を襲うことに反対する。
石塚ホノ - 白川和子
山本シギ - 星野晶子
野坂サヨレ - 小野敦子:
松井ノイ - 恩田恵美子
尾瀬ホトリ - 松田真知子
福沢ハツ - 田根楽子: デンデラに来たカユと初めて会話する3人の内の1人。組頭の一人。
黒井クラ - 赤座美代子: カユより一足先に姥捨てに遭った。カユの良き理解者。
保科キュウ - 山口美也子: 手作りの弓矢による狩りが得意。4人いる組頭の1人。
桂川マクラ - 角替和枝: デンデラに来たカユと初めて会話する3人の内の1人。
小渕イツル - 山口果林: カユより数歳年上。カユから一緒にデンデラを捨てる事を誘われる。
浅見ヒカリ - 山本陽子: デンデラに来たカユと初めて会話する3人の内の1人。4人いる組頭の1人。
カユの母 - 月船さらら: カユの回想シーンに登場。
斎藤カユの息子の嫁 - 小谷陽子: カユを含めた家族を見送る。
村のまとめ役らしき男 - 石橋凌: 姥捨てが決まったカユのために儀式を行う。

スタッフ

監督・脚本 - 天願大介
原作 - 佐藤友哉
製作・企画 - 中沢敏明、遠谷信幸
プロデューサー - 厨子健介、古賀俊輔、湊谷恭史
音楽 - めいなCo.
撮影 - 古谷巧
照明 - 高坂俊秀
美術 - 稲垣尚夫
装飾 - 相田敏春
録音 - 加来昭彦
VFX・特殊造形 - 岡部淳也
衣装 - 千代田圭介
編集 - 阿部亙英
整音 - 矢野正人
音響効果 - 柴崎憲治

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