デヴィッド・クロスビー

デヴィッド・クロスビー：音楽と波乱に満ちた生涯

デヴィッド・クロスビー（1941年8月14日 - 2023年1月18日）は、アメリカの音楽史にその名を刻んだシンガーソングライター、ギタリストです。バーズ、クロスビー・スティルス&ナッシュ（CSN）、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング（CSN&Y）といった、1960年代から1970年代にかけての音楽シーンを代表するバンドで活躍しました。その甘く伸びやかなテナーボイスと、音楽的な革新性で、数々の名曲を生み出しました。

生い立ちと音楽への目覚め

カリフォルニア州ロサンゼルスで生まれたクロスビーは、映画撮影監督の父フロイド・クロスビーの影響を受け、幼い頃から芸術に触れて育ちました。フォークシンガーとしての活動をスタートさせた後、ロジャー・マッギンとの出会いをきっかけに、1965年、伝説のバンド「バーズ」を結成します。

バーズでの成功と音楽的革新

バーズは、「ミスター・タンブリン・マン」などのヒット曲を連発し、瞬く間にアメリカ音楽界のトップに躍り出ました。クロスビーは、その美しいハーモニーと、リズムギターにおける独特なカッティングで、バンドサウンドに大きく貢献。また、「燃えつくせ（Everybody has been burned）」、「ドラフト・モーニング」といった自作曲では、シタールの導入や変則チューニングなど、実験的な試みも積極的に行い、バーズの音楽性を広げました。

しかし、1967年、アルバム収録を巡るメンバー間の対立から、クロスビーはバーズを脱退します。

CSN&Yでの輝かしい時代

バーズ脱退後、クロスビーはスティーヴン・スティルス、グラハム・ナッシュと「クロスビー・スティルス&ナッシュ」（CSN)を結成。1969年には、ニール・ヤングが加わり、「クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング」（CSN&Y）として、音楽史に燦然と輝く名盤『デジャ・ヴ』を発表します。クロスビーは、このアルバムで、タイトル曲「デジャ・ヴ」や「カット・マイ・ヘア」といった個性的な楽曲を提供し、グループの成功に大きく貢献しました。

ソロ活動と苦難の時代

CSN&Yの活動休止後、クロスビーはソロアーティストとしても活動。1971年には、初のソロアルバム『イフ・アイ・クッド・オンリー・リメンバー・マイ・ネーム』を発表し、高い評価を得ました。しかし、1980年代に入ると、長年の薬物中毒が深刻化し、創作活動にも支障をきたすようになります。1985年には、銃器法違反で実刑判決を受け、刑務所生活を送るなど、苦難の時代を過ごしました。

社会復帰と音楽への情熱

刑務所からの出所後、クロスビーは薬物中毒の治療に専念し、社会復帰を果たします。1988年には、CSN&Yを再結成し、『アメリカン・ドリーム』を発表。その後も、ソロ活動やCSN/CSN&Yとしての活動を続け、音楽への情熱を燃やし続けました。

晩年と音楽的遺産

晩年は、実の息子であるジェイムス・レイモンドとの共作や、スナーキー・パピーとのコラボレーションなど、新たな音楽的挑戦も積極的に行いました。2021年には、コロナ禍でライブ活動が困難になる中、全楽曲の権利を売却しましたが、音楽への情熱は衰えることなく、2021年にアルバム『For Free』、2022年にはライブアルバム『ライブ・アット・ザ・キャピトル・シアター』を発表しました。

2023年1月18日、デヴィッド・クロスビーは81歳でこの世を去りましたが、彼の音楽は、時代を超えて多くの人々に愛され続けています。バーズ、CSN&Y、そしてソロアーティストとして、数々の名曲を生み出した彼の音楽的遺産は、永遠に音楽史に刻まれることでしょう。

デヴィッド・クロスビーの主なディスコグラフィー

イフ・アイ・クッド・オンリー・リメンバー・マイ・ネーム (1971)
オー・イエス・アイ・キャン (1989)
Croz (2014)
Lighthouse (2016)
Sky Trails (2017)
Here If You Listen (2018)
For Free (2021)
ライブ・アット・ザ・キャピトル・シアター (2022)

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