デービッド・ギル

サー・デービッド・ギル

サー・デービッド・ギル（Sir David Gill, 1843年6月12日 - 1914年1月24日）は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍した、スコットランド・アバディーン生まれの著名な天文学者です。

元々は時計技術を修めた彼は、ジェイムズ・リンジーが設立した私設天文台での計時協力に関わったことを契機に天文学の世界へと足を踏み入れました。ギルのキャリアにおいて特筆すべきは、天文観測に写真技術を積極的に応用した先駆者であるという点です。それまでの眼視観測に比べて、写真乾板を用いることで、より多くの星を一度に記録し、その位置や明るさを高精度に測定することが可能となりました。

彼の初期の重要な業績の一つに、1877年に南大西洋のアセンション島で行われた火星の観測があります。この観測を通じて、地球と太陽の間の距離（天文単位）を、当時としては非常に高い精度で決定することに成功しました。

1879年、ギルは南アフリカの喜望峰に位置するケープ天文台の「女王陛下の天文学者」（Her Majesty's Astronomer）に任命されました。彼はこの要職を1906年まで、実に26年間にわたって務め上げました。ケープ天文台での長い任期中、彼は主に南天の星々の組織的な観測と測量に従事しました。広範な南天の空を写真観測によって網羅し、その成果は、オランダの天文学者ヤコブス・カプタインとの共同作業により、1882年に「ケープ写真掃天星表」（Cape Photographic Durchmusterung）として結実しました。この星表は、南天の恒星に関する詳細な情報を提供し、その後の天文学研究において重要な基礎データとなりました。

ギルはまた、国際的な観測プロジェクトの推進にも貢献しました。例えば、世界中の天文台が協力して空全体を写真観測し、大規模な星表を作成する「Carte du Ciel」（星図プロジェクト）においても中心的な役割を果たしています。

その優れた業績が認められ、ギルは様々な栄誉を受けました。1883年にはイギリス王立協会フェローに選出されています。

受賞歴:

イギリス王立天文学会ゴールドメダル（1882年、1908年）
ジェームズ・クレイグ・ワトソン・メダル（1899年）
ブルース・メダル（1900年）
ロイヤル・メダル（1901年）

彼の貢献を称え、月と火星のクレーターには彼の名が冠されています。

サー・デービッド・ギルは、写真天文学の発展に大きな足跡を残し、特に南天の精密な星表作成を通じて、天文学の進歩に計り知れない貢献をした人物として記憶されています。彼は1914年1月24日にロンドンでその生涯を終えました。

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