トイドールズ

トイ・ドールズ：コミカルなパンクの先駆者

トイ・ドールズ（The Toy Dolls）は、1979年にイギリスで結成されたパンク・ロックバンドです。ロンドンのパンクムーブメントが沈静化した時期に登場し、政治的なメッセージや社会的な怒りではなく、ユーモアとコミカルな要素を取り入れた独自のスタイルで注目を集めました。

ユニークな音楽性と歌詞

彼らの音楽は、パンク・ロックの疾走感と、覚えやすいギターリフ、そしてコミカルな歌詞が特徴です。多くのパンクバンドが社会的なテーマを扱うのに対し、トイ・ドールズは日常の出来事やジョークをテーマにした歌詞を、パンクの美意識の範囲内で表現しています。例えば、以下のような曲名がその特徴をよく表しています。

"Yul Brynner Was A Skinhead"（ユル・ブリンナーはただのハゲ）
"My Girlfriend's Dad's A Vicar"（俺のガールフレンドの親父は教区牧師）
"James Bond Lives Down Our Street"（ジェームズ・ボンドは俺たちの通りに住んでいる）

また、彼らは曲のタイトルに頭韻をよく用います。

"Peter Practice's Practice Place"（ピーター・プラクティスの練習場所）
"Fisticuffs in Frederick Street"（フレデリック通りの殴り合い）
"Neville is a Nerd"（間抜けなネヴィル）

彼らのアルバムには、著名な楽曲のカバーがパンク・ロック調にアレンジされて収録されていることも特徴です。例えば、「トッカータとフーガ ニ短調」「剣の舞」のようなクラシック音楽から、「Livin' la Vida Loca」「Lazy Sunday Afternoon」「I'm Gonna Be (500 Miles)」「The Final Countdown」のようなポピュラーソングまで、幅広いジャンルの楽曲をパンク・アレンジで演奏しています。

また、「Kids in America」のパロディである「The Kids in Tyne and Wear」や、「The Devil Went Down to Georgia」のパロディである「The Devil Went Down to Scunthorpe」など、ポピュラーソングのパロディも手がけています。

彼らの楽曲は、キャッチーなギターリフから始まり、最後はイントロを少し長くした終奏で終わるという構成が基本となっています。歌詞の内容は、主にオルガ自身の経験に基づいていることが多いようです。

トレードマーク

メンバーはそれぞれニックネームを持ち、四角いサングラスを常に着用しています。これは彼らのトレードマークの一つです。ただし、アルバム『One More Megabyte』のジャケットでは、例外的にサングラスをかけていないメンバーの姿を見ることができます。

バンドの歴史

バンドは、ボーカルのピート・“ズールー”・ロブソン、ギタリストのマイケル・“オルガ”・オールガー、ドラマーのコリン・“Mr.スコット”・スコット、ベーシストのフィリップ・“フリップ”・ダグデイルの4人で結成されました。その後、ボーカルはオルガが担当することになり、オルガが中心人物としてバンドを牽引することになります。メンバーチェンジは頻繁で、特にドラマーとベーシストは多くのメンバーが入れ替わりました。オルガ以外のメンバーは、バンドの入れ替わりが激しい中で、様々なニックネームを持ち、コミカルなキャラクターを演じました。

当初は地元サンダーランド市を中心に活動しており、地元で最初のファンクラブが結成されました。当初はオイ!パンクに分類されましたが、音楽性からポップ・パンクやパンク・パセティック（悲壮系パンク）と分類されることもあります。

1980年にはデビューシングル「Tommy Kowey's Car」をリリース。B面の「She Goes To Finos」と共に、すぐに完売し、現在ではコレクターズアイテムとなっています。1982年のクリスマスには、イギリスの童謡「Nellie the Elephant」をパンク調にアレンジしてシングルリリース。インディーズチャートで16位を記録し、1984年には再録音され、イギリスのシングルチャートで4位を記録する大ヒットとなりました。

1983年には初のアルバム『Dig That Groove Baby』を発表。その後、ヨーロッパやアメリカでツアーを行いました。2000年代には一時活動休止しましたが、その後、活動を再開。オルガは、ロリータ18号のプロデュースや、ディッキーズ、アディクツのサポートメンバーとしても活動していました。

メンバー構成

2019年6月時点でのメンバーは以下の通りです。

オルガ（マイケル・オールガー）：ボーカル/ギター (1979– )
トミー・グーバー（トム・ブライス）：ベース/ボーカル (2003– )
アメージング・ミスター・ダンカン（ダンカン・レッドモンズ）：ドラムス/ボーカル (2006– )

過去には多くのメンバーが在籍しており、ドラマーは14人、ベーシストは11人に及びます。

日本との関係

トイ・ドールズは、1986年1月の初来日以来、日本で頻繁に公演を行っており、来日回数は12回を超えています。また、活動休止期間中には日本のガールズバンド、ロリータ18号のプロデュースを手掛け、ヨーロッパデビューを支援しました。彼らの楽曲「Livin' la Vida Loca」のプロモーションビデオでは、ロリータ18号のメンバーと共演もしています。

ディスコグラフィ

彼らの主なアルバムは以下の通りです。

1983: Dig That Groove Baby
1985: A Far Out Disc
1986: Idle Gossip
1987: Bare Faced Cheek
1989: Wakey Wakey
1991: Fat Bob's Feet
1993: Absurd-Ditties
1995: Orcastrated
1997: One More Megabyte
2000: Anniversary Anthems
2004: Our Last Album?
2012: The Album After the Last One
2019: Episode Xlll


トイ・ドールズは、パンク・ロックの枠にとらわれず、独自のスタイルを追求し続ける、コミカルで愛すべきバンドです。

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