トゥナイト (アルバム)

デヴィッド・ボウイの15枚目のスタジオアルバム、『トゥナイト』は、1984年9月24日にEMIからリリースされました。この作品は、前作『レッツ・ダンス』で商業的に大成功を収めたボウイが、その勢いを維持して発表したものです。

アルバムは、ヒットシングルとなった「ブルー・ジーン」をはじめ、伝説的なシンガーであるティナ・ターナーとの共演が実現したタイトル曲「トゥナイト」など、全9曲で構成されています。音楽的には、前作で追求された洗練されたポップサウンドやダンスミュージックの要素が受け継がれており、当時のボウイのスタイルを反映しています。

しかしながら、本作の収録曲には特徴的な傾向が見られます。純粋な書き下ろしの新曲は比較的少なく、代わりにビーチ・ボーイズの「神のみぞ知る (God Only Knows)」やジミー・リードの「アイ・キープ・フォーゲッティング (I Keep Forgetting)」といった既存の楽曲のカバー、さらにはイギー・ポップとの過去の共作をボウイ自身が再演したセルフカバーが多くを占めている点が挙げられます。

商業的な成功という点では、『トゥナイト』は大きな成果を収めました。イギリスのアルバムチャートでは、先行シングル「ブルー・ジーン」の人気にも支えられ、初登場1位を獲得しました。これは、アルバム『スケアリー・モンスターズ』以来、3作連続での首位獲得という快挙でした。アメリカでもプラチナ・ディスクに認定されるなど、世界各国のチャートで上位にランクインし、前作『レッツ・ダンス』が生み出した勢いを確かに受け継いでいました。

オリジナル盤の収録曲は以下の通りです。

A面
ラヴィング・ジ・エイリアン (LOVING THE ALIEN)
ドント・ルック・ダウン (DON'T LOOK DOWN)
ゴッド・オンリー・キノーズ (GOD ONLY KNOWS) - ザ・ビーチ・ボーイズのカバー
トゥナイト (TONIGHT) - ティナ・ターナーとのデュエット
B面
ネイバーフッド・スレット (NEIGHBORHOOD THREAT)
ブルー・ジーン (BLUE JEAN)
タンブル・アンド・トゥワール (TUMBLE AND TWIRL)
アイ・キープ・フォーゲッティング (I KEEP FORGETTING) - ジミー・リードのカバー
ダンシング・ウィズ・ザ・ビッグボーイズ (DANCING WITH THE BIG BOYS) - イギー・ポップが参加

1995年のヴァージン・レコードからの再リリース盤には、以下の3曲がボーナストラックとして追加収録されました。

ディス・イズ・ノット・アメリカ (THIS IS NOT AMERICA)
1985年公開の映画『コードネームはファルコン』のメインテーマとして、アメリカのジャズ・フュージョンバンド、パット・メセニー・グループとの共演で制作されました。
世界が崩れる時 (AS THE WORLD FALLS DOWN)
1986年公開の、ボウイ自身が出演した映画『ラビリンス/魔王の迷宮|ラビリンス_魔王の迷宮』の挿入歌として知られています。
アブソリュート・ビギナーズ (ABSOLUTE BEGINNERS)
* これも1986年公開の、ボウイ出演映画『アブソリュート・ビギナーズ』のメインテーマです。ベストアルバムなどに収録されることの多いシングルバージョンはイントロなどが短く編集されていますが、この再リリース盤には8分を超えるフルバージョンが収められています。

レコーディングには、ボウイ自身のボーカルとキーボードに加え、長年の盟友であるカルロス・アロマー（ギター）をはじめ、デレク・ブランブル（ベース、ギター、シンセサイザー）、カーマイン・ロジャス（ベース）、オマー・ハキム（ドラムス）といった実力派ミュージシャンが参加しています。また、ゲストボーカリストとして前述のティナ・ターナーとイギー・ポップが名を連ねています。さらに、パーカッション担当のサミー・フィゲロアやマリンバ奏者のガイ・セント＝オンジュ、複数のバッキングボーカリスト、そして管楽器セクション（トランペット、サックス、クラリネット）がサウンドを彩っています。

『トゥナイト』は、ボウイのキャリアの中でも商業的なピークの一つにおける作品であり、当時のヒットサウンドを取り入れつつ、彼の多才な音楽性を垣間見せるアルバムと言えるでしょう。

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