トゥール・モンパルナス

トゥール・モンパルナス：パリの街にそびえる高層ビル

パリ15区モンパルナス地区に位置するトゥール・モンパルナスは、210メートルの高さを持つ超高層ビルです。59階建てで、主にオフィスとして利用されていますが、56階にはレストラン、最上階には展望台が設置され、観光客にも人気です。

1969年から1972年にかけて、旧モンパルナス駅の跡地に建設されました。設計はEugène Beaudouin、Urbain Cassan、Louis Hoym de Marienの3人の建築家、施工はCampenon Bernard社（現在のヴァンシ）が担当しました。パリメトロのモンパルナス＝ビヤンヴニュ駅直上に建つという、優れた立地も特徴です。

展望台からは、パリ市内はもちろん、40キロメートル先まで見渡すことができ、オルリー空港への飛行機の離着陸も観察できます。屋上デッキはヘリポートも兼ねており、ヘリコプターの発着のために柵がわずか2分で撤去できる仕組みとなっています。トゥール・モンパルナスは、パリの歴史的都市軸上に位置しており、その独特な景観は、パリの街並みに与える影響の観点から、建設当時から激しい議論を巻き起こしました。

その簡素で一枚岩のような外観と、伝統的なパリの街並みにそびえ立つ巨大さから、多くの批判が寄せられました。そのため、1972年の竣工からわずか2年後には、パリ都心部における超高層ビルの建設が禁止されることとなりました。「トゥール・モンパルナス最上階からの眺めはパリで一番美しい。なぜならパリで唯一トゥール・モンパルナスが見えない場所だからだ」という冗談めかした言葉も、このビルの存在感と、パリの街並みへの影響の大きさを示しています。これは、エッフェル塔を評したモーパッサンの言葉をもじったものです。

竣工当時はヨーロッパ最高層ビルでしたが、21世紀に入り、パリ市郊外のラ・デファンス地区では、トゥール・モンパルナスを上回る高層ビルが建設されています。トゥール・ファースト（旧トゥール・AXA）は増改築により、高さ225メートル（尖塔部231メートル）となり、フランス最高層ビルの座をトゥール・モンパルナスから奪いました。また、トゥール・ファーレ、トゥール・スィニャル、トゥール・ジェネラリといった300メートル級の高層ビル建設もラ・デファンスで計画されていましたが、世界金融危機の影響で中止されています。

さらに、トゥール・モンパルナスの建設時に使用されたアスベストの問題も、大きな課題となっています。2007年時点からアスベスト除去工事が行われていますが、長期間にわたる大規模な作業になると予想されています。現在もオフィスビルとして利用され、展望台からの眺めを楽しむ観光客も多く訪れますが、その歴史と、パリの街並みに与えた影響、そして現在も続く課題は、このビルを複雑で興味深い存在にしています。

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