トウバナ属

トウバナ属（Clinopodium）

トウバナ属（学名：Clinopodium、漢字表記：塔花属）は、シソ科に分類される属の一つです。その名の通り、特徴的な花の付き方が名前の由来となっています。

特徴

トウバナ属の植物は、一般的に小型の多年草であり、以下のような特徴を持ちます。

葉: 対生し、縁には鋸歯が見られます。
花: 偽輪生と呼ばれる特有の付き方をし、茎の先端や葉の付け根に多数の花が密集して咲きます。
萼: 筒状で唇形をしており、上唇は浅く3つに、下唇はやや深く2つに裂けます。萼には13本の脈があり、喉元に長毛が見られることがあります。
花冠: まっすぐ、またはわずかに曲がった筒状で、唇形をしています。上唇は全縁であるか、やや2裂し、下唇は3裂して開きます。
雄蕊: 4本あり、下側の2本がやや長く、4本とも斜め上に伸びます。
果実: 4つの分果からなり、倒卵円形で、基部に小さな着点があります。

分布

トウバナ属は、世界中に約150種が分布しており、特に北半球の温暖帯から温帯地域に多く見られます。日本には、そのうち5〜6種が自生しています。

日本に分布する主な種

クルマバナ (Clinopodium chinense subsp. grandiflorum)
花柄の基部に線形の小苞があり、紅紫色の花を咲かせます。花冠の長さは6-10mm程度。
山野の道端などの草地に生育し、南千島、北海道、本州、四国、九州、朝鮮半島に分布します。
*オキナワクルマバナ (Clinopodium chinense subsp. chinense)
分類上の基本種であり、全体に毛が密生しているのが特徴です。
琉球列島や中国大陸に分布しています。
*ヤマクルマバナ (Clinopodium chinense var. shibetchense)
茎は斜め上に伸び、淡い紅紫色を帯びた白色の花を咲かせます。
山地の谷間に生育します。
*トウバナ (Clinopodium gracile)
淡い紅紫色の花を咲かせ、花冠の長さは5-6mm程度です。
田んぼの畦や湿った道端などに生育し、本州、四国、九州、琉球列島、朝鮮半島、中国大陸に分布します。
*ミヤマクルマバナ (Clinopodium macranthum)
花柄の基部に線形の小苞があり、紅紫色の大きな花（15-20mm）を咲かせます。
深山の草地に生育し、本州の北陸地方から東北地方にかけて分布します。
*イヌトウバナ (Clinopodium micranthum var. micranthum)
萼に開出した長毛が密生しています。花冠は白色で、わずかに淡紫色を帯び、長さは5-6mm程度です。
山間の木陰などに生育し、北海道、本州、四国、九州に分布します。
*ミヤマトウバナ (Clinopodium micranthum var. sachalinense)
萼にはまばらに短毛が生えています。花冠は白色で、わずかに紅紫色を帯び、長さは5-6mm程度です。
谷間の林の中に生育し、樺太、千島列島、北海道、本州の近畿地方以北に分布します。
*ヤマトウバナ (Clinopodium multicaule)
草丈は10-30cm程度で、白色の花を咲かせます。花冠の長さは8-9mm程度です。
山地の木陰に生育し、本州の中部地方以西、四国、九州に分布します。
*ヒロハヤマトウバナ (Clinopodium multicaule var. latifolium)
草丈は40cm程度になり、葉が広いのが特徴です。
本州の中部地方から関東地方北部に分布します。
*ヤクシマトウバナ (Clinopodium multicaule var. yakusimense)
別名コケトウバナとも呼ばれ、全体的に小型です。
奈良県の春日山や屋久島に分布し、環境省により準絶滅危惧種に指定されています。

その他の主な種

Clinopodium brownie
ニイタカトウバナ (Clinopodium laxiflorum)
タイワンミヤマトウバナ (Clinopodium umbrosum)
Clinopodium vulgare*

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