トカゲ属

トカゲ属（Plestiodon）

爬虫綱有鱗目スキンク科に属するPlestiodon属は、日本で一般的に「トカゲ」として知られる種を含むグループです。この属に分類されるトカゲは、アジア東部から北米にかけて広く分布しており、特に日本列島には多様な固有種が生息しています。

分類学的な変遷

Plestiodon属は、比較的近年に分類が見直された属です。かつては多くのスキンク科のトカゲがEumeces属として広くまとめられていましたが、分子系統学的な研究が進んだ結果、Eumeces属が単系統群ではないことが明らかになりました。このため、Eumeces属は遺伝的な系統に基づいてPlestiodonを含む４つの異なる属に分割されました。現在、「トカゲ属」という和名は、日本列島に分布する旧Eumeces属の種が含まれることになったPlestiodon属に対して主に用いられています。

日本産の主な種

日本列島および周辺地域には、Plestiodon属の様々な種が生息しています。その中でも代表的な種をいくつか紹介します。

ニホントカゲ (Plestiodon japonicus)
本州（伊豆半島を除く）、四国、九州、北海道、そしてロシアの沿海地方に広く分布する、日本で最も馴染み深いトカゲの一つです。かつては別の学名が使われていましたが、その模式標本が後にオカダトカゲと判明したため、現在の学名が与えられました。

ヒガシニホントカゲ (Plestiodon finitimus)
2012年にニホントカゲの集団から新たに独立した種として記載されました。主に東日本およびロシア沿海地方に分布しており、外部形態や遺伝子の解析によって区別されています。

オカダトカゲ (Plestiodon latiscutatus)
伊豆半島と伊豆諸島に固有の種です。ニホントカゲとは学名の歴史的な経緯で関連があります。伊豆諸島、特に三宅島、八丈島、青ヶ島に生息する個体群は、環境省のレッドリストで「絶滅のおそれのある地域個体群」に指定され、保全上の懸念があります。特に三宅島では、かつて多数生息していましたが、外来種のイタチによる捕食によって著しく数を減らしてしまいました。

キシノウエトカゲ (Plestiodon kishinouyei)
日本国内で見られるトカゲの中では最大級で、全長が40センチメートルに達することもあります。沖縄県の宮古列島から八重山列島にかけての島々に分布しています。この種は国の天然記念物に指定されているほか、環境省のレッドリストでは「絶滅危惧II類（VU）」として評価されており、保護が急務とされています。

オキナワトカゲ (Plestiodon marginatus)
リュウキュウトカゲとも呼ばれ、鹿児島県のトカラ列島から沖縄諸島にかけて分布しています。主に標高の低い平地に近い環境で見られ、同じ地域に生息するバーバートカゲとは生息地を分けていると考えられています。

バーバートカゲ (Plestiodon barbouri)
沖縄県の奄美大島から沖縄本島、久米島にかけて分布します。オキナワトカゲとは対照的に、山地などのやや標高の高い場所に生息する傾向が見られます。この種も環境省のレッドリストで「絶滅危惧II類（VU）」に指定されています。

イシガキトカゲ (Plestiodon stimpsonii)
成体で全長が15センチメートルほどと、ニホントカゲよりやや小型の種です。沖縄県の八重山諸島に分布していますが、与那国島には生息していません。

アオスジトカゲ (Plestiodon elegans)
主に中国東部や台湾に分布する種ですが、日本では尖閣諸島に生息が確認されています。

クチノシマトカゲ (Plestiodon kuchinoshimensis)
鹿児島県の口之島から記載された、比較的最近認識された種です。

保全の現状

日本産のPlestiodon属には、前述のキシノウエトカゲやバーバートカゲのような絶滅危惧種や、オカダトカゲのように特定の地域個体群が危機的な状況にある種が含まれています。生息地の破壊や改変、外来種による捕食などが彼らの生存を脅かしています。これらの多様なトカゲたちを守るためには、生態系全体の保全や外来種対策など、継続的な取り組みが重要です。

Plestiodon属は、分類学的な興味深さとともに、日本列島の自然環境を反映した多様な進化の歴史を示しています。身近な存在でありながら、その保全には課題も多いグループと言えるでしょう。


関連項目:
トカゲ科
* スキンク科

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