トニー・マーティン

トニー・マーティン

アメリカ合衆国のエンターテイナー、トニー・マーティンは、歌手そして俳優として長きにわたり活躍しました。本名をアルヴィン・モリス（Alvin Morris）といい、1913年12月25日に誕生、2012年7月27日に98歳でその波乱に富んだ生涯を閉じています。彼は実に70年以上に及ぶ息の長いキャリアを持ち、特に1930年代後半から1950年代半ばにかけては、数多くのヒット曲を世に送り出し、その名を不動のものとしました。代表曲には「ウォーク・ハンド・イン・ハンド」や「ストレンジャー・イン・パラダイス」などがあります。

生い立ちと初期のキャリア

トニー・マーティン、ことアルヴィン・モリスは、カリフォルニア州サンフランシスコで生まれました。父はエドワード・クラレンス・モリス、母はハッティー・スミスでした。彼の家族はユダヤ系で、祖父母は全員が東ヨーロッパからの移民という背景を持っていました。幼少期から青春期にかけて、彼はサンフランシスコ湾対岸のオークランドで過ごしました。

音楽との最初の重要な出会いは10歳の時で、祖母からサクソフォーンを贈られたことがきっかけでした。すでにグラマースクール時代にはグリークラブに参加しており、音楽家としての素養を示していました。オークランド工業高校在学中には、自身の最初のバンド「ザ・レッド・ペッパーズ」を結成するなど、精力的に音楽活動を展開します。その後、地元の著名なオーケストラ・リーダー、トム・ゲランのバンドにリード楽器奏者として参加し、経験を積みました。このゲランのバンドでは、後にビッグバンド界の巨匠となるウディ・ハーマンとも共演する機会を得ています。

彼はセントメリーズ大学で学び、さらに1930年代半ばにはセントメリーズ大学カリフォルニア校でも高等教育を受けました。大学卒業後、トム・ゲランのバンドを離れることを決意し、自身の才能を試すべくハリウッドへと旅立ちます。この頃から、彼は本名ではなく「トニー・マーティン」という芸名を使用するようになり、俳優そして歌手として映画界でのキャリアをスタートさせました。

俳優・歌手としての成功

トニー・マーティンのキャリアは多岐にわたりましたが、特に歌手としての成功が顕著でした。1930年代後半から1950年代半ばにかけては、彼の甘くロマンチックな歌声が多くの人々を魅了し、数十曲もの楽曲がヒットを記録しました。彼の歌は、当時の大衆音楽シーンにおいて重要な位置を占め、ラジオやレコードを通じて広く親しまれました。また、彼は多くの映画作品にも出演し、俳優としての才能も発揮しました。彼の出演作品は、ミュージカルからドラマまで幅広く、エンターテイナーとしての地位を確立しました。

私生活

私生活においては、有名な女優でありダンサーでもあったシド・チャリシーとの関係が特筆されます。二人は1948年に再婚し、チャリシーが2008年に亡くなるまでの約60年間という、ハリウッドでは非常に稀な長い結婚生活を共にしました。二人は公私にわたる良きパートナーであり、その絆は多くの人々に知られていました。チャリシーの死後も、マーティンは活動を続け、晩年まで精力的な姿を見せました。

トニー・マーティンは、その類稀な才能と長期にわたる活躍により、アメリカのポピュラー音楽史および映画史において重要な足跡を残しました。彼の残した音楽と映像は、今もなお多くのファンに愛されています。

もう一度検索