ウディ・ハーマン

ウディ・ハーマン：ビッグバンドを牽引した革新者

ウディ・ハーマン（1913年5月16日 - 1987年10月29日）は、アメリカを代表するジャズミュージシャンであり、クラリネット、サックス奏者、そして歌手として幅広い才能を発揮しました。特に、彼が率いたビッグバンド、"The Herd"（群れ）は、数々の名プレイヤーを輩出し、ジャズ史に燦然と輝く足跡を残しています。

ヴォードヴィルからビッグバンドリーダーへ

ウィスコンシン州ミルウォーキーで生まれたハーマンは、幼い頃からヴォードヴィルの舞台に立ち、15歳でプロのサックス奏者として活動を開始しました。1936年には、アイシャム・ジョーンズ楽団を引き継ぎ、ウディ・ハーマン・オーケストラとして新たなスタートを切ります。初期はデューク・エリントンやカウント・ベイシーの影響を受け、スウィング・ジャズを基調としたブルースを演奏していました。

株式会社組織のビッグバンド

ハーマンは、ジャズ史上初めて株式会社組織のビッグバンドを設立しました。当時のアメリカ社会では、ベニー・グッドマン楽団の成功により白人ビッグバンドがブームでしたが、ハーマンは、あえて黒人音楽であるブルースに焦点を当て、オール白人バンドでありながらもブルースを前面に押し出すという斬新なコンセプトを打ち出しました。これは、旧アイシャム・ジョーンズ楽団のメンバーによる、株式会社ウディ・ハーマン楽団を「売れる楽団」にするための経営改革でした。

"The Herd"の誕生と進化

批評家によってはこの初期から"The Herd"の原型が見られたという意見もありますが、一般的には1944年以降のコロンビア・レコードとの契約後を"First Herd"（第1期ウディ・ハーマン楽団）と呼びます。スウィングのリズムにビバップの要素を取り入れたサウンドは、多くの人々を魅了しました。1945年には、後にウエストコースト・ジャズを代表するミュージシャンたちが集結し、バンドは最盛期を迎えます。1946年には、リズム・アンド・ブルース歌手のルイ・ジョーダンを迎え、「カルドニア」をレコーディングし、ハーマンはバンドリーダーとして絶頂期を迎えました。

"The Herd"は、文字通り「群れ」を意味し、モダンジャズ期以降、メンバーチェンジやコンセプトの変化に合わせて様々な名前を冠するようになりました。特に、ビバップコンセプトの"First Herd"とクール・ジャズコンセプトの"Second Herd"は、ジャズ史において重要な位置を占めています。

1950年代に入ると、ハード・バップ時代に突入し、"First Herd"と"Second Herd"の楽曲を踏襲しつつ、ハーマン自身は新たなコンセプトの"Third Herd"を打ち出します。その後も、"Thundering Herd"や"Young Thundering Herd"など、様々な"Herd"が登場し、その多さにハーマン自身も「一体いくつあったのか、わからない」と語ったほどです。

"Second Herd"と「フォー・ブラザーズ」

1947年には、"Second Herd"と呼ばれる第2期ウディ・ハーマン楽団を結成。このバンドのサックスセクション（ズート・シムズ、サージ・チャロフ、ハービー・スチュワード、スタン・ゲッツ）をフィーチャーした「フォー・ブラザース」は、大ヒットを記録し、バンドは「フォー・ブラザース・バンド」とも呼ばれました。また、ラルフ・バーンズ作曲の「アーリー・オータム」も、ゲッツのソロが光る美しいバラードとして人気を博し、「フォー・ブラザース」と並ぶ"Second Herd"の代表曲となりました。

晩年

1960年代には、ロックの影響を受け、エレクトリックピアノやエレクトリックベースを取り入れた作品を発表するなど、常に新しい音楽に挑戦し続けました。1987年10月29日、ウディ・ハーマンは74歳でこの世を去りました。晩年は税金問題に苦しみながらも、音楽への情熱を失うことなく活動を続けました。

ウディ・ハーマンは、ビッグバンドのリーダーとして、常に革新的な音楽を追求し、多くの才能あるミュージシャンを育て上げました。彼の音楽は、今もなお多くの人々に愛され、ジャズ史に輝き続けています。

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