トマス・ゲインズバラ

トマス・ゲインズバラ: 18世紀イギリスの画家

トマス・ゲインズバラ（Thomas Gainsborough, 1727年5月14日 - 1788年8月2日）は、18世紀のイギリスにおける著名な画家であり、特に肖像画と風景画で知られています。彼は故郷であるサフォークの自然や風景に深い愛情を持ち、『肖像画は金のために、風景画は楽しみのために描く』と語ったように、風景を描くことが自己表現の本質であったと言えます。

生涯とキャリアの初期

ゲインズバラはロンドンの北東部、サフォークのサドベリで生まれ、家族は羊毛を扱う職人でした。彼は13歳の時に父にその素描の才能を見込まれ、1740年にロンドンへ上京しました。ロンドンではユベール＝フランソワ・グラヴロやホガースなどの著名な画家たちのもとで修業を重ね、1743年には自身のスタジオを開設。1746年には公爵の非嫡出子と結婚しましたが、彼の初期のキャリアは順調ではありませんでした。オランダ風景画を模倣しつつ生活をしていましたが、1848年には再びサドベリに帰郷し、そこで人物を小さく描き込んだ風景画スタイルの作品を手がけました。

その後、1752年にサフォーク州のイプスウィッチ、さらに1759年に保養地のバースへと移り、1774年にはロンドンへ戻り、肖像画家としての名声を築き上げました。英国王室からの多くの依頼を受けるようになり、その評判は高まっていきました。

ゲインズバラの作品

ゲインズバラは一生のうちにおよそ700点以上の肖像画を製作し、その中には彼が画きたかった風景画も多く含まれます。彼の代表作となる『アンドリューズ夫妻像』では、人物が画面の左端に描かれ、右半分には広がる田園風景が描かれています。この作品からも彼の風景に対する愛情が伝わってきます。また、特に『グレアム夫人像』においては、流れるような筆遣いと若い貴婦人の品格が際立ち、その表現力は他の追随を許さないものであるとされています。

彼は後の画家たち、特にコンスタブルに多大な影響を与えましたが、自身が嫌々描いた肖像画の中にも傑作は多々存在することが知られています。その一部は現代でも高く評価されています。

晩年

ゲインズバラの晩年には、フィリップ・ジェイムズ・ド・ラウザーバーグによって作成されたミニチュア機械劇場の影響を受けて、多くのガラス絵を制作しました。これは新たな表現手法として彼の創作活動に新たな刺激を与えたとされます。

代表的な作品

• - 青衣の少年（1770年、カリフォルニア州・サンマリノ、ハンティントン・ライブラリー）
• - アンドルーズ夫妻像（1748-49年頃、ロンドン、ナショナルギャラリー）
• - ピーター・ウィリアム・バーカー夫人の肖像（1781年、ニューヨーク、フリック・コレクション）

ゲインズバラの作品は、彼の特異な画風や自らの情熱が色濃く反映されており、現在でも多くの人々によって愛されています。彼の才能とビジョンは、18世紀の芸術に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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