ハンティントン・ライブラリー

ハンティントン・ライブラリー：知と美が融合する場所

カリフォルニア州サンマリノに位置するハンティントン・ライブラリーは、もともと鉄道王ヘンリー・E.ハンティントンの邸宅でした。現在では、図書館、美術館、植物園の3つの要素が融合した、教育研究機関として機能しています。その歴史的価値と美しさは、多くの人々を魅了し続けています。

図書館：稀覯本と歴史的資料の宝庫

図書館には、グーテンベルク聖書やチョーサーの『カンタベリー物語』のエレスメア装飾写本など、歴史的・美術的価値の高い書物が多数所蔵されています。特にエイブラハム・リンカーン関連の資料は数千点にも及び、彼の友人であるウォード・ヒル・ラモンの書簡も含まれています。これらの稀覯本や装飾写本は研究目的で頻繁に利用されており、その数は装飾写本が約650万冊、稀覯本が100万冊を超えます。また、世界で唯一ハムレットの初版四つ折版を2冊所蔵しており、ベンジャミン・フランクリンの自伝手稿やヘンリー・デイヴィッド・ソローの『森の生活』草稿、ジョン・ジェームズ・オーデュボンの『アメリカの鳥類』、チャールズ・ブコウスキー初版本など、貴重な資料が数多く保管されています。

これらの貴重な資料は一般公開されることもありますが、閲覧には博士号取得者や、それに準ずる研究者による推薦状が必要です。ハンティントン・ライブラリーの研究部門は、毎年多くの短期・長期研究者を受け入れています。

美術館：ヨーロッパとアメリカの芸術が集う

美術館では、18世紀から19世紀のイギリス、フランスの芸術家による作品と、18世紀から20世紀初頭のアメリカの芸術家の作品が展示されています。所蔵品の中でも有名なのは、ロヒール・ファン・デル・ウェイデンの『聖母子』（1460年頃）です。イギリス絵画では、トマス・ゲインズバラの『青い服の少年』（1770年）やトーマス・ローレンスの『ピンキー』（1794年）が、アメリカ絵画ではフレデリック・エドウィン・チャーチの『Chimborazo』が挙げられます。また、彫刻作品ではハリエット・ホズマーの『Zenobia in Chains』（1859年）などがあります。これらのコレクションは、展示内容を変えながら一般公開されています。

ウィリアム・モリス・コレクション

1999年には、ラファエル前派のデザイナーであるウィリアム・モリスのコレクションが加わりました。このコレクションは、ステンドグラス、壁紙、織物、刺繡、ドローイング、陶磁器、2000冊以上の書物、オリジナルの木版など、モリス商会とその前身であるモリス・マーシャル・フォークナー商会が制作した、モリスのインテリア作品の完全な記録を含んでいます。このコレクションは、2002年に開催されたモリスの展覧会「Creating the Useful and the Beautiful」の根幹をなしました。

植物園：多様なテーマガーデンと珍しい植物

植物園は、約485,600平方メートルの広大な敷地を有し、世界中から集められた珍しい植物が、様々なテーマに沿って展示されています。オーストラリア・ガーデン、カメリア・コレクション、チルドレン・ガーデン、デザートガーデン、植物研究温室、ハーブ園、日本庭園、睡蓮池、ノース・ビスタ、パーム・ガーデン、バラ園、シェークスピア・ガーデン、亜熱帯・ジャングル・ガーデン、中国庭園など、12以上のテーマガーデンが存在します。植物研究温室には、熱帯植物と食虫植物の豊富なコレクションがあり、広大な敷地内にはユーカリが植えられ、オーストラリアのアウトバックが再現された場所もあります。ハンティントン・ライブラリーは、絶滅危惧植物の保護、繁殖にも力を入れており、過去には世界最大の花であるスマトラオオコンニャクが開花したこともあります。

特に注目すべきは、サボテンなどの多肉植物のコレクションです。これは、ヘンリー・E.ハンティントンと庭園の責任者であるウィリアム・ハートリッチが、北米、中米、南米を旅して収集したものです。デザート・ガーデンは、砂漠気候に適応した多種の乾生植物のコレクションを保有しており、その数は5,000種以上にも及びます。現在では世界で最も優れたコレクションの一つとされています。

映画のロケ地としても利用

ハンティントン・ライブラリーは、その美しい庭園を背景に、多くの映画やミュージックビデオのロケ地としても使用されています。以下にその一例を挙げます。

『メイム』（1974年）
『Only Yesterday』（1975年）- カーペンターズのミュージック・ビデオ
『ミッドウェイ』（1976年）
『ビバリーヒルズ・コップ2』
『オーディナリー・ワールド』（1993年） - デュラン・デュランのミュージック・ビデオ
『幸福の条件』（1993年）
『ビバリーヒルズ・ニンジャ 』（1997年）
『ミステリー・メン』（1999年）
『チャーリーズ・エンジェル』（2000年）
『ウェディング・プランナー』（2001年）
『ホット・チック』（2002年）
『シモーヌ』（2002年）
『N.Y.式ハッピー・セラピー』（2003年）
『ディボース・ショウ』（2003年）
『スタスキー&ハッチ』（2004年）
『SAYURI』（2005年）
『セレニティー』（2005年）
『Ned's Declassified Field Trip』（2007年）
『ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記』（2007年）
『花婿の秘密』（2008年） - CSI:マイアミの第6シーズンのエピソード
『G.I.ジョー』
『A Beautiful End』- J. R. リチャーズのミュージック・ビデオ

ハンティントン・ライブラリーは、歴史、芸術、自然が融合した、まさに知と美の殿堂と言えるでしょう。

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