トマス・ブルフィンチ

トマス・ブルフィンチ：神話と伝承を紡いだアメリカの作家

トマス・ブルフィンチ（Thomas Bulfinch, 1796年7月15日 - 1867年5月27日）は、アメリカ合衆国の作家であり、特に神話や伝承に関する研究・著作でその名を知られています。彼の最も有名な作品は、一般に『ギリシア・ローマ神話』として知られる『The Age of Fable（伝説の時代）』です。

生涯

1796年、ブルフィンチはマサチューセッツ州ニュートンで生まれました。彼はボストン・ラテン・スクール、フィリップス・エクセター・アカデミーという名門校を経て、ハーバード大学を1814年に卒業しました。1818年には、建築家であった父チャールズ・ブルフィンチが国会議事堂の設計に関わるのに伴い、一家でワシントンD.C.へ移住。1825年にボストンに戻りました。

1837年からは、ボストン・マーチャント・バンクで銀行員として働き、生涯の残りをそこで過ごしました。銀行員としての仕事の傍ら、彼は8冊の著作を発表しました。

1867年5月27日、71歳でこの世を去り、ケンブリッジのマウント・オーバン・セメタリーに埋葬されました。

主な著作

ブルフィンチは生涯で数多くの著作を残しましたが、特に重要なのは以下の作品群です。

Hebrew Lyrical History（1853年）: 旧約聖書の詩篇に関する研究書です。
The Age of Fable; or, The Beauties of Mythology（1855年）: 最も有名な作品で、ギリシア・ローマ神話を中心に、ゾロアスター教、ヒンドゥー教、インド仏教、北欧神話など、世界各国の神話について解説しています。
The Age of Chivalry; or, Legends of King Arthur and the Knights of the Round Table（1858年）: アーサー王と円卓の騎士の物語をはじめとする、騎士道に関する物語を扱っています。
The Boy Inventor; or, Memoir of Mathew Edwards（1860年）: ブルフィンチが保護していた貧しい青年、マシュー・エドワーズの死を悼んで書かれた作品です。
Legends of Charlemagne; or, Romance of the Middle Ages（1862年）: フランスのシャルルマーニュ伝説を扱った作品です。
Poetry of the Age of Fable（1863年）: 上記の『The Age of Fable』に引用された詩を一冊にまとめたものです。
Shakespeare Adapted for Reading Classes（1865年）
Oregon and Eldorado; or, Romance of the Rivers（1866年）

『伝説の時代』とその影響

ブルフィンチの代表作である『伝説の時代』は、古典文学に頻繁に登場する神話に関する知識を、体系的に、そして平易な文章でまとめたものです。この本は、特にイギリス文学を読むアメリカ人に向けて書かれました。神話に関する知識がない読者でも、文学作品をより深く理解できるように意図されています。

『伝説の時代』は、長年にわたり多くの読者に愛され、様々な言語に翻訳されています。日本でも、『ギリシア・ローマ神話』というタイトルで親しまれており、多くの版が出版されています。野上弥生による翻訳や、大久保博による現代的な翻訳など、多様な翻訳が存在します。

ブルフィンチの著作は、神話や伝承の世界への入り口として、今日でも多くの人々に読み続けられています。彼の功績は、古典文学の理解を深め、文化的な教養を高める上で、計り知れない価値を持っています。

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