トム・メシェリー

トム・メシェリー：バスケットボールと文学を愛した異色の英雄

トム・メシェリー（Tom Meschery）は、NBAのフィラデルフィア/サンフランシスコ・ウォリアーズ、シアトル・スーパーソニックスで活躍した名選手であり、ウォリアーズでは背番号『14』が永久欠番となっている。しかし、彼の人生はバスケットボール選手としてだけでは語り尽くせない。激動の時代を生きた彼の生い立ち、NBAでの輝かしいキャリア、そして引退後の作家活動を通して、トム・メシェリーという人物像に深く迫る。

激動の時代を生き抜いた生い立ち

1938年、満洲国ハルビンで生まれたメシェリーは、ロシア革命から逃れてきた両親を持つ。父はロシア軍人、母は貴族階級出身という複雑な家庭環境だった。第二次世界大戦中には、母と共に東京の強制収容所に収容されるという過酷な経験もしている。終戦後、アメリカに移住するも、赤狩りの影響で名前を『トーマス・メシェリー』と改名せざるを得なかった。

少年時代はテニスに熱中していたが、成長とともにバスケットボールを始め、その才能を開花させる。高校卒業時には多くの大学から勧誘を受け、聖メアリー大学カリフォルニア校に進学。1961年のNBAドラフトでフィラデルフィア・ウォリアーズから全体7位指名を受け、プロの世界へと足を踏み入れた。

NBAでの輝かしいキャリア

ウォリアーズでは、伝説的な選手ウィルト・チェンバレンと共にプレー。1年目から12.1得点9.1リバウンドを記録し、その荒々しいプレイスタイルから"Furious Russian"（猛烈なロシア人）という異名を与えられた。1962-63シーズンにはキャリアハイの16.0得点9.8リバウンドを記録し、オールスターにも初出場。1963-64シーズンにはNBAファイナルを経験するも、ボストン・セルティックスに敗れた。

その後、シアトル・スーパーソニックスに移籍し、チームのオリジナルメンバーとして活躍。1年目には平均ダブルダブルを達成するなど、ベテランとしてチームを牽引した。1970-71シーズンを最後に現役を引退。NBA通算成績は10シーズン778試合出場、9,904得点6,698リバウンド。

引退後：詩人・作家としての才能を開花

引退後は、ABAカロライナ・クーガーズのヘッドコーチを1シーズン務めた後、バスケットボールから離れ、ネバダ州リノの高校で英語教師として教鞭を執った。聖メアリー大学時代に文学士の学位を取得していたメシェリーは、1974年にアイオワ大学で修士号を取得。詩人としても活動し、いくつかの詩集を出版している。バスケットボールに関係した詩も多く、かつてのチームメイトであるウィルト・チェンバレンに捧げた詩も存在する。

主な詩集には、 Over the Rim（1970年）、Caught in the Pivot（1973年）、Nothing We Lose Can Be Replaced（1999年）がある。

トム・メシェリーの遺産

トム・メシェリーは、NBAオールスターゲーム出場（1963年）、聖メアリー大学殿堂、ネバダ・ライターズ殿堂、ベイエリア・スポーツ殿堂入りを果たしている。また、ゴールデンステート・ウォリアーズでは背番号『14』が永久欠番となっている。

トム・メシェリーは、バスケットボール選手としてだけでなく、詩人・作家としても才能を発揮し、多くの人々に感動を与えた。彼の波乱万丈な人生と、バスケットボール、そして文学への情熱は、これからも語り継がれていくだろう。

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