トヨタ・TS050 HYBRID

トヨタ・TS050 HYBRID

トヨタ・TS050 HYBRIDは、トヨタ自動車が2016年のFIA世界耐久選手権（WEC）に向けて開発したプロトタイプで、TS040の後継モデルです。この車両は、トヨタがル・マン24時間レースに初めて参加してから33年を経て、ようやく得た総合優勝を達成した日本車としての驚異的な存在となりました。

背景

トヨタは2014年にTS040を投入し、WECのタイトルを獲得しましたが、その後ポルシェやアウディといった競合他社に資金を投じられ、競争に後れを取ってしまいました。これを受けて、2016年に向けて新しい開発計画を進める必要が生じ、約10ヶ月という短期間でTS050の開発が決定されました。

TS050は、モーター・ジェネレーター・ユニット（MGU）を前後に搭載した四輪ハイブリッド方式を採用しつつも、パワートレインを一新。新たに導入されたレギュレーションに対応するため、エンジンは3,700ccのV8自然吸気エンジンから2,400ccのV6直噴ツインターボエンジンに変更されました。このエンジンはトヨタの東富士研究所で独自に開発され、F1技術を取り入れた副燃焼室技術も採用されています。また、蓄電装置もスーパーキャパシタからハイパワー型リチウムイオン電池に更新され、エネルギー効率を向上させています。

2015年からトヨタのモータースポーツ活動は「TOYOTA GAZOO Racing」と統一ブランドとして展開され、ル・マンに特化した開発が進められました。開発リーダーの村田久武は、「今年こそル・マンで優勝する」と明言し、優勝を目指してチーム一丸となって取り組みました。

2016年のレース活動

2016年3月、TS050はポール・リカールの合同テストで初公開されました。シーズン開幕戦のシルバーストーンまでは様々なテストと調整を繰り返しましたが、開幕戦では熟成不足から苦戦しました。第2戦のスパ6時間レースでは、5号車が独走するもエンジントラブルで敗北。

ル・マン24時間レースでは、トヨタは強い意気込みを持って臨みました。「トヨタよ、敗者のままでいいのか」というキャッチフレーズが印象的でしたが、レース中にポルシェとの熾烈な接戦が展開されました。具体的には、最終盤でポルシェ2号車のピットインを受け、トヨタ5号車がリードしていましたが、残り6分で中嶋が「パワーが出ない」と無線で訴え、問題の発生でリードを失いました。最終的に、トヨタはレースを制することができず、ポイント獲得を逃す結果となりましたが、その性能に対する称賛は高まりました。

シーズン後半には、富士6時間レースでついに6号車が今季初優勝を果たし、再び活気を取り戻してシーズンを終えましたが、最終的にはシーズン3位で完走しました。

2017年における進化と挑戦

2017年に入り、TS050のさらなる進化が求められました。新しいドライバーやマシン構成が試みられ、特にル・マンでは良い走行が期待されましたが、練習走行中に起こったトラブルによって優勝どころかリタイアという結末も経験しました。トヨタはその後のシーズンまで懸命に戦い続けましたが、シーズン全体の上位争いには苦しむこととなりました。

主な成果

2018年から2019年には、新たに参戦したアロンソ選手と共にチームを強化し、彼らの活躍もありル・マンでは見事な勝利を収めました。過去30年の日本車の悲願である総合優勝を達成したことで、メディアからも大きな注目を浴びることになりました。

最後の活動

2021年のシーズンから新たな規定に従った後継モデルGR010 HYBRIDへとバトンタッチしますが、TS050はその歴史と共にトヨタにおける耐久レースの象徴として人々の記憶に残り続けることでしょう。TS050の詳細なスペックは公式サイトで確認できます。

トヨタ・TS050 HYBRIDは、数多くの挑戦と臨場感あふれるレースを経て、日本の自動車産業の新たな可能性を示した重要なモデルなのです。

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