トラウトニウム

トラウトニウム (Trautonium)

トラウトニウムは、フリードリヒ・トラウトヴァインによって開発された電気楽器です。名手として知られるオスカル・ザラが、その演奏技術を披露しました。

概要

当時の電気楽器は、オンド・マルトノやテルミンのように、同時発音数が少なく単音しか出せないものがほとんどでした。しかし、トラウトニウムは複音や豊かな倍音を出すことを目指して開発されました。テレフンケンによって発売され、鍵盤はありませんが、二段構造のクラビコードのように、右手と左手用の「操作段」を備えている点がオンド・マルトノとの大きな違いです。

この楽器の大きな特徴は、発音した音を弛張型発振回路などで変調し、多彩な音色効果を生み出せる点にあります。三和音を同時に発音したままグリッサンドするなど、オンド・マルトノでは実現不可能な演奏も可能です。トラウトニウムは、そのユニークな音色と演奏性から、当時の音楽家たちに大きな影響を与えました。

開発元のドイツでは、ヒンデミットやゲンツマーなどによって協奏曲が書かれましたが、後発のハモンドオルガンに人気を奪われ、次第に衰退していきました。しかし、オスカル・ザラが出演したプロモーション動画では、パガニーニの奇想曲を編曲して演奏しており、その魅力的な音色を聴くことができます。

また、効果音としては、アルフレッド・ヒッチコック監督の映画「鳥」で、この楽器の独特な音が使用されています。現在では、いくつかの機能が加えられたMixturtrautoniumが、ピーター・ピヒラーによって復元され、時折演奏されることがあります。

脚注

参考文献

Klaus Ebbeke, Paul Hindemith und das Trautonium. HJb 11 (1982)
Peter Donhauser, Elektrische Klangmaschinen. Die Pionierzeit in Deutschland und Österreich. Böhlau, Vienna et al. 2007, ISBN 3-205-77593-7.

関連項目

オンド・マルトノ
ハモンドオルガン
* テルミン

もう一度検索