トラック野郎・御意見無用

トラック野郎・御意見無用：日本を駆け抜ける男たちの物語

1975年、日本の映画界に新たな旋風が巻き起こった。それが、東映が製作した『トラック野郎・御意見無用』である。本作は、デコレーションを施したトラックが日本全国を縦断し、様々な人間模様を描く痛快娯楽活劇の第一作目として、多くの観客を魅了した。当初は単発作品として企画されたにもかかわらず、公開初日の盛況ぶりからシリーズ化が決定するほどの空前の大ヒットを記録した。

華麗なるトラックと個性豊かな登場人物たち

主人公は、菅原文太演じる星桃次郎。愛称は「一番星」。彼と共に全国各地を旅するのは、愛川欽也演じる相棒の松下金造。愛称は「やもめのジョナサン」。彼らが乗るトラック「一番星号」と「ジョナサン号」は、華麗な装飾が施され、見る者の目を奪う。

物語は、下関から始まる。巧みな運転技術で渋滞を抜け出す二人は、川崎に戻り、それぞれ異なる人生を垣間見せる。桃次郎はソープランドへ、ジョナサンは妻と7人の子供たちが待つ家庭へと向かう。そして、再び二人は東北へと旅立つ。

旅の途中で出会うのは、魅力的な女性や個性的なトラック野郎たち。ウェイトレスの倉加野洋子（中島ゆたか）への桃次郎の一目惚れ、女トラック運転手・竜崎京子（夏純子）の思い、そしてライバルである九州のトラック野郎「関門のドラゴン」（佐藤允）との激しい競争など、様々な人間ドラマが展開する。

怒涛の展開と哀愁漂う人間模様

路上でのトラブル、仲間との出会い、そして別れ。桃次郎とジョナサンは、様々な出来事を経験しながら、友情を育んでいく。時には衝突しながらも、互いを支え合い、困難を乗り越えていく姿は、感動を呼ぶ。

中でも、ジョナサンの過去にまつわるエピソードは、物語に深みを与える。元警官であった彼は、飲酒運転が原因で懲戒免職となり、現在はトラック運転手として生計を立てている。過去の過ちと、現在抱える家族への責任との間で葛藤するジョナサンの姿は、見る者の胸を打つ。

さらに、桃次郎と洋子の恋物語も、物語に彩りを加える。しかし、二人の恋路は、決して平坦ではない。様々な障害が二人の間に入り込み、二人の関係は複雑さを増していく。

シリーズ化への序章

『トラック野郎・御意見無用』は、単なる娯楽作品にとどまらない。友情、愛情、そして人生の哀愁が凝縮された、人間ドラマとしての魅力も持ち合わせている。この作品の大ヒットは、シリーズ化を決定づけただけでなく、日本の映画史に新たな一頁を刻んだと言えるだろう。

スタッフとキャスト

監督：鈴木則文

脚本：鈴木則文、澤井信一郎

音楽：木下忠司

主題歌：「一番星ブルース」 菅原文太、愛川欽也

挿入歌：「トラックドライビングブギ」 ダウン・タウン・ブギウギ・バンド

そして、個性豊かなキャストたちが脇を固める。

菅原文太、愛川欽也をはじめ、中島ゆたか、夏純子、佐藤允、春川ますみなど、豪華な顔ぶれが作品の魅力をさらに高めている。

ロケ地とその後

埼玉県東松山市や青森県など、全国各地を舞台に撮影が行われた。ドライブイン「くるまや」のシーンは、東松山市にあった「田園食堂」（後に「天然の味田園」）で撮影された。公開から45周年を記念して、ロケ地を紹介する企画が雑誌にも掲載された。

本作は、シリーズ作品とは異なる点もある。マドンナ役、ライバルとの関係、ジョナサンの設定、そしてトラック車両など、後のシリーズ作品に繋がる要素と、本作だけの独特な要素が混在している点が興味深い。

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