トラフザメ

トラフザメ（Zebra Shark）

トラフザメ（虎斑鮫、学名：Stegostoma fasciatum）は、テンジクザメ目に属するサメの一種で、トラフザメ科トラフザメ属に分類される唯一の種です。インド太平洋の温暖な海域、特に水深60m以浅のサンゴ礁に生息しています。

形態

成体のトラフザメは、円筒形の体型、体側の隆起線、非常に長い尾鰭、そして薄黄色の体に散らばる黒い斑点が特徴で、容易に識別できます。幼体は成体とは全く異なる横縞模様を持ちます。全長は通常2.5m程度ですが、最大で3.5mに達することもあります。

幼魚: 背側が暗褐色で腹側が淡黄色、黄色い横縞と斑点があります。
成魚: 薄黄色の体に黒い斑点模様。個体ごとに模様が異なり、個体識別が可能です。

分類と学名

トラフザメは、1759年にアルベルトゥス・セバによって新種として記載されました。その後、1837年にミュラーとヘンレによって Stegostoma 属に移されました。
属名の Stegostoma はギリシャ語の "stego"（覆い）と "stoma"（口）に由来し、種小名の fasciatum は「縞模様」を意味し、幼魚の体色に由来します。英名の "zebra shark" も同様の理由によります。

分布

インド太平洋の熱帯域に広く分布しており、南アフリカから紅海、ペルシャ湾、インド、東南アジア、台湾、日本、ニューカレドニア、トンガ、オーストラリア北部などで確認されています。

生態

夜行性で、日中は海底で休み、夜になると活動を開始します。岩の割れ目に潜む魚、貝、甲殻類、軟体動物、ウミヘビなどを捕食します。通常は単独で生活しますが、繁殖期には大きな群れを形成することがあります。

繁殖

卵生で、雌は数十個の卵鞘を、粘着糸で岩などに固定します。卵鞘は暗褐色から紫色で、約4〜6ヶ月で孵化します。孵化した幼魚は全長20-36cm程度で、成魚に比べて尾鰭が長いです。

系統

トラフザメは、形態および分子系統解析の結果から、ジンベエザメやコモリザメ科とともに単系統群を構成すると考えられています。

人との関連

おとなしい性格で、人に危害を加えることはほとんどありません。そのため、ダイビングスポットや水族館で人気があります。しかし、肉や鰭、肝油などを目的とした漁獲や、生息地の破壊により、個体数が減少しており、IUCN（国際自然保護連合）によって絶滅危惧種に指定されています。

保全状況

トラフザメは、IUCNによって絶滅危惧種に指定されています。主な脅威は、漁業による混獲や、沿岸開発、爆発物を用いた漁などです。オーストラリアでは、エビの底引き網漁による混獲が主な脅威ですが、ここでは軽度懸念とされています。

補足

幼魚の縞模様は、群れの中で各個体の境界を曖昧にし、捕食者が個体を狙いにくくする役割があると考えられています。
飼育下では、無性生殖の例も報告されています。

トラフザメの保護のためには、漁獲規制や生息地の保全が重要です。また、水族館での展示などを通じて、トラフザメの生態や保全の重要性を広く知らせていくことも大切です。

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