トランジスタ時計

トランジスタ時計の概要

トランジスタ時計（トランジスタとけい、transistor clock）は、トランジスタの技術を基にした独自の発振回路を持つ無接点式の時計です。この時計は、トランジスタが振り子やテンプを駆動するために利用され、一般的にはトランジスタクロックとも呼ばれます。特に、従来の機械式時計に比べて高い信頼性を誇るため、広く普及しました。

歴史的背景

トランジスタ時計が登場する前の電池式時計では、主に電気接点部分が故障の原因とされ、信頼性に欠けるものでした。しかし、1955年に日本真空時計株式会社（現：ジェコー）が開発した低速CLOCK MOTOR（CMモーター）が、トヨタ自動車で採用されたことで、大きな進展を遂げます。このCMモーターは多くの自動車メーカーでも採用され、精工舎も1959年にこのモーターを使用した家庭用時計を発売しましたが、電力源となる平角四号乾電池の供給には問題がありました。

トランジスタ時計は、機械的な接点を不要にしたことで、故障のリスクが大幅に軽減されました。1958年には精工舎から初のトランジスタ式振り子掛時計が出荷され、その後1960年には報時機能付きの掛時計「ソノーラ」、1962年にはテンプ式の置時計「セルスター」が発売されました。しかし、1980年代半ばからは腕時計にクォーツ振動子が採用されるようになり、さらに正確で安価なクォーツ時計が増えていきました。

動作原理

ここでは、テンプ式トランジスタ時計の基本的な動作原理について説明します。テンプ式トランジスタ時計には、永久磁石が取り付けられた2枚のてん輪板があり、その間に駆動コイルと発電コイルが配置されています。トランジスタは、発電コイルに流れるベース電流を元に、駆動コイルに流すコレクタ電流を制御します。

時計に電池を入れると、駆動コイルに電流が流れ、永久磁石が反発してテンプが回転します。このとき、永久磁石の動きが発電コイルに電流を送ります。こうしてトランジスタが電気を流し続けます。しかし、永久磁石がコイルから離れると、発電コイルには電気が供給されず、トランジスタも電流を通さなくなります。この段階でテンプはひげぜんまいの力で元の位置に戻ります。

このサイクルは繰り返し行われます。トランジスタ時計は、機械式時計とは動力の流れが逆であるため、「逆脱進機」と呼ばれることもあります。

トランジスタ時計の形式

トランジスタ時計は主に「テンプ式」と「振り子式」の二つに分類されます。

テンプ式

テンプ式は、通常の掛時計や置き時計、目覚まし時計など多様な形状の時計で広く用いられます。さまざまなメーカーがこの方式を採用しており、電磁石が切り替わる際に磁極が入れ替わる仕組みを持っています。特にRHYTHMとCITIZENがこの形式の製品を多く製造していました。セイコーも振り子式トランジスタクロックを多く展開しており、他にもパタパタ時計でもテンプ式が利用されることがありました。

振り子式

振り子式は、アトー式と松下式に分かれます。アトー式は主にセイコーが製造し、コイルを二つ持ち、左右の磁極が切り替わります。一方、松下式はナショナル（現：パナソニック）によって主に製造され、こちらは一つのコイルが特徴です。互いに異なる駆動方式を持ちながらも、振り子式のデザインで様々な形状が存在しています。

主なメーカー

トランジスタ時計の主要なメーカーには、以下のような企業があります。

• - SEIKO（精工舎）
• - CITIZEN
• - RHYTHM
• - NATIONAL（パナソニック）
• - KOSEISHA（光星舎）
• - AICHI（愛知時計）

これらのメーカーが競い合いながら、時計の技術革新を進めてきました。トランジスタ時計は、長い間多くの人々の生活に密着し、時計技術の進化を象徴する存在でした。

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