トランジットモール

トランジットモールとは

トランジットモール（Transit mall）とは、自家用車の通行が制限され、バスや路面電車、LRT、タクシーなどの公共交通機関が優先される形式の道路を指します。これは歩行者と車両が共存する空間を提供し、都市の利便性を高めることを目的としています。

背景

欧州の都市中心部では、広場と公共交通機関が共存している様子が見受けられますが、北米ではそれを参考にしながら、特に公共交通に依存する低所得者層を中心市街地に呼び込むことで活性化を図る施策としてトランジットモールが導入されました。

歴史

トランジットモールは1962年、アメリカのミネソタ州ミネアポリスで最初に実現しました。ニコレット通りに設けられたニコレット・モールは、バスやタクシーのみが利用できる歩行者専用道路で、1967年に運用が開始されました。この成功を受けて、アメリカ全土で同様のモールの導入が進んでいきます。バッファローやセントルイス、ボルチモア、ポートランドなど、約50の都市でトランジットモール形式が採用されています。

シカゴのステイトストリートモールやデンバーの16番街モール、ポートランドの5番街、6番街にもトランジットモールが設置されましたが、90年代以降、自動車通行を排除した道路の一部は再度一般道路として戻される事例も見られます。成功が報告されたポートランドの例でも、現在は一部の区間で一般車両が通行可能となっています。また、存続しているモールについては改良や改善に向けた議論が続けられています。

日本における試み

日本では1999年、浜松市で初めてトランジットモールが試験運用されました。遠州鉄道と協力し、「オムニバスタウン」という施策の一環として行われましたが、警察との協議やPR不足により、本格実施には至りませんでした。

その後、日本各地での導入が進み、群馬県前橋市や石川県金沢市、兵庫県姫路市、そして沖縄県那覇市での取り組みが実施されています。特に那覇市では国際通りで定期的にトランジットモールが運営されており、地域の交通手段として定着しています。

さらに、導入の可能性が検討されている地域も存在します。福井県福井市や栃木県宇都宮市、京都府京都市、愛媛県松山市、長崎県長崎市では、トランジットモールの実証実験や整備が進められています。

まとめ

トランジットモールは、市中心部の活性化や公共交通機関の利用促進を目指しており、都市の交通体系において重要な役割を担う取り組みです。各都市での成功と失敗の事例を通じて、今後の交通政策に影響を与えることが期待されています。

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