オムニバスタウン

オムニバスタウン：地方都市のバス交通を支える取り組み

1997年、モータリゼーションの進展や人口減少による路線バスの経営悪化を背景に、国土交通省（当時運輸省・建設省）と警察庁は、バス利用促進のための補助金制度「オムニバスタウン」を開始しました。この制度は、地方都市における交通問題解決に大きく貢献しています。

オムニバスタウンの目的と課題

地方都市では、郊外への商業施設や公共機関の移転、ロードサイド店舗の増加により、従来の中心市街地と郊外住宅地を結ぶだけの路線では、需要を満たせなくなっていました。オムニバスタウンは、バスの速達性向上や利用者の利便性向上を図り、この課題を解決するための総合対策事業です。

具体的には、国と地方自治体、バス事業者が連携し、ノンステップバスの導入、コミュニティバスの開設、ICカード乗車券システムの導入、バス専用レーンの整備、パークアンドライドの推進など、多様な施策を実施しています。これらの取り組みは、交通渋滞や交通事故の減少、大気汚染や地球温暖化の抑制にもつながる、持続可能な都市づくりに貢献しています。

当初は観光都市への指定が多かったものの、近年は市町村合併や大都市制度への移行を機に、中核市や政令指定都市でもオムニバスタウンの指定を受けるケースが増えています。これは、合併による市域拡大や予算増大によって、都市経営を見直す契機となったためと考えられます。地下鉄などの大規模な交通投資が困難な中規模都市にとって、バス交通の充実が重要な課題となっていることがうかがえます。

オムニバスタウンの補助金制度

オムニバスタウンに指定されると、国から5年間の補助金が支給されます。補助金の割合は事業内容によって異なり、1/5から1/2まで幅があります。例えば、松山市の5カ年計画では総事業費21億8千万円に対し、国が26.5％を負担しました。事業者側も設備投資に相当の補助を受けられるため、バスの近代化や路線網の改善に役立っています。

国の予算規模は、指定都市の数や事業内容によって変動します。2005年度には、指定当初5年間の事業期間中の9市への補助金として16.9億円が支出されました。

各都市の取り組み

オムニバスタウンに指定された各都市では、それぞれの地域特性に応じた独自の施策が展開されています。以下、いくつかの都市の取り組みを紹介します。

盛岡市

盛岡市は、ゾーンバスシステムの導入と、中心部循環バス「でんでんむし」の運行を開始しました。これは、城下町特有の狭い道路や河川による交通渋滞の緩和に効果を発揮しています。

仙台市

仙台市は「アクセス30分構想」に基づき、バス交通と鉄道を連携させた施策を実施しました。JR線駅前広場や接続道路の整備、パークアンドライドの推進などを行い、郊外と都心部のアクセス向上を目指しました。都心部では、ゾーン料金制の導入がバス利用者の増加に繋がっています。

鎌倉市

鎌倉市では、観光客向けにはパークアンドライド、住民向けには交通不便地域へのコミュニティバスの導入や乗合タクシーの試験導入など、多様な取り組みが行われています。

新潟市

新潟市は広域合併と政令指定都市移行を機に、「にいがた交通戦略プラン」の一環としてオムニバスタウンに指定されました。基幹バス路線の整備、路線網再編、ICカード乗車券「りゅーと」の導入など、大規模な改革を推進しています。

その他の都市

金沢市、静岡市、浜松市、岐阜市、奈良市、松江市、岡山市、福山市、松山市の各都市でも、ノンステップバス導入、ICカード乗車券システム導入、バスロケーションシステム導入、バス停の改良、コミュニティバスの開設など、様々な施策が実施され、地域住民の生活の利便性向上に寄与しています。

オムニバスサミットとバスマップサミット

オムニバスタウンに指定された都市では毎年、「全国オムニバスサミット」が開催されています。このサミットは、各都市の取り組みを紹介し、情報交換を行う場として、バス交通の更なる発展に貢献しています。

また、民間団体が主催する「全国バスマップサミット」も、中規模都市を中心に開催されており、公共交通利用促進に関するフォーラムも同時開催されるなど、バス交通に関する取り組みは多岐に渡っています。

まとめ

オムニバスタウンは、地方都市におけるバス交通の活性化に大きな役割を果たす制度です。各都市の創意工夫あふれる取り組みは、高齢化社会や環境問題への対応においても、重要なモデルケースとなっています。今後も、オムニバスタウンによる地方都市の交通問題解決への取り組みが期待されます。

もう一度検索