トランスファー

トランスファー：四輪駆動車の心臓部

四輪駆動車において、トランスファーはエンジンの動力を前後の車軸に分配する重要な機構です。トランスミッションとドライブシャフトを繋ぎ、走行状況に応じて動力の配分を制御します。英語圏では主に「トランスファーケース」と呼ばれ、他にも「トランスファーギアケース」「トランスファーギアボックス」「トランスファーボックス」などの名称が用いられています。オーストラリアでは「ジョッキーボックス」とも呼ばれます。

トランスファーの機能

トランスファーの主な機能は、エンジンの動力を前後の車軸に適切に分配することです。これは複数のギアの組み合わせで行われますが、現代の多くのトランスファーはチェーン駆動を採用しています。ドライバーはトランスファーレバーや電子スイッチによって、2WD（後輪駆動）モードと4WD（四輪駆動）モードを切り替えることができます。

フルタイム4WD車では、センターデフがトランスファーの役割を担う場合があり、常に全輪駆動状態を維持します。一方、パートタイム4WD車では、トランスファーによって前後のどちらかへの動力を遮断することで、2WD走行を可能にしています。この切り替えは、ドグクラッチ式やトルクスプリット式多板クラッチ式など様々な方法で行われます。

多くのSUVや大型車両には、ローレンジギアを備えた副変速機が組み込まれています。ローレンジギアは、低速で大きなトルクを生み出し、悪路走行や重い荷物の牽引時に威力を発揮します。これは、トランスミッションのギアとは独立して操作されます。

さらに、軽トラックなどでは、トランスファーからダンプ昇降用やウインチ駆動用のパワーテイクオフ（PTO）を取り出すこともあります。

トランスファーの種類と構造

トランスファーには、大きく分けてギア駆動式とチェーン駆動式の2種類があります。ギア駆動式は強固で耐久性が高い反面、重量があります。チェーン駆動式は静粛性と軽量性に優れ、小型トラックやSUVなどに多く採用されています。

また、トランスファーの設置形態としては、トランスミッションと一体型の「内蔵型」、トランスミッションに接続された独立型の「結合型」、そして完全に独立した「独立型」があります。内蔵型はトランスアクスルを採用する車両に多く見られ、独立型は大型車両に多く見られます。

トランスファーの操作方法

トランスファーの操作方法は、手動式と自動式があります。手動式では、運転席に配置されたレバーで操作し、フリーホイールハブも手動で操作する必要があります。自動式では、ダッシュボードのスイッチやボタン、またはMTシフトノブに装備されたスイッチで操作します。自動式は、停止中または低速走行時に行うことができます。

一部の車両、特に不整地走行を目的とした車両では、2つのトランスファーを備えた「デュアルトランスファー」システムが採用されています。これは、より多くのギア比を選択可能にし、極めて困難な地形にも対応できるように設計されています。

まとめ

トランスファーは、四輪駆動車の走行性能を大きく左右する重要な部品です。その種類や構造、操作方法は多岐に渡りますが、いずれもエンジンの動力を適切に前後の車軸に分配し、様々な路面状況に対応することを目的としています。本記事が、トランスファーに関する理解を深める一助となれば幸いです。

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