トランプの壁

トランプの壁（トランプ・ウォール）

「トランプの壁」とは、ドナルド・トランプが2016年の大統領選挙中に公約として掲げた、アメリカとメキシコの国境に沿った壁の建設計画を指します。この計画は、非正規移民の取り締まり強化を目的としており、国境沿いに分離壁を設置することを主眼としています。トランプは、アメリカがこの壁を建設し、費用はメキシコが負担すべきと主張しましたが、その呼びかけに対してメキシコのエンリケ・ペーニャ・ニエト大統領は明確な反発を示しました。

壁の建設と国家政策

トランプ政権下で、2017年に非正規移民の取り締まりが強化され、彼は大統領令13767に署名して国境の壁建設を決定しました。しかし、予算の問題から建設が始まるまでには時間がかかりました。この計画では、国境に約724.2キロメートル（450マイル）の壁が建設されることを目指していました。

2018年には、壁の建設に必要な予算を180億ドル（約2兆円）と見積もって議会に提出しましたが、当然ながら大きな反対に遭いました。その結果、トランプ政権は2019年に国家非常事態宣言を発令し、軍事予算を壁建設に転用する手段を講じました。これにより、アメリカ国内での支出に大きな影響を及ぼす結果となりました。

ゼロ・トレランス政策とその影響

特に注目すべきは、トランプ政権が導入した「ゼロ・トレランス政策」です。この政策のもとでは、非正規移民の親子が国境で分離され、親は拘束される一方で子供は別の施設に送られるというシステムが導入されました。この結果、多数の子どもたちが親と再会できない状態になり、非人道的な扱いとして広く批判されました。

例えば、2018年には全国で703子どもが親から引き離されるという事件が発生し、多くの人々が抗議しました。著名人や人権団体がこの政策に対抗する声を上げ、政治的・社会的な論争を引き起こしました。連邦裁判所は、引き離された家族を再会させるように命じる判決を下しながらも、現実には再会できないケースが多数存在していました。

DACAと移民政策の変遷

トランプ政権下では、「DACA」プログラムの撤廃も提案されました。これは幼少時にアメリカに連れてこられた非正規移民の保護を目的とするもので、以前のオバマ政権によって成立した制度です。しかし、2020年の最高裁判所での審理においては、このプログラムの廃止は違法であるとの判断が下され、一定の移民保護が続けられることになりました。

自然環境への影響

トランプの壁建設計画は、ただ単に国境を分断するだけではなく、自然環境にも大きな影響を及ぼすことが懸念されています。国境付近には絶滅危惧種が数多く生息しており、壁建設により生息地の分断が起こる恐れがあります。生物多様性センターによると、壁建設はジャガーの生息地や地下水への影響も懸念されています。

また、オーガンパイプカクタス国立公園内で行われた土木工事によって、サボテンの移植が計画されていましたが、実際には行われず、環境問題が取り沙汰されています。このような状況を受け、環境保護団体や一般市民の間で、壁建設に対する反対運動が続いています。

結論

トランプの壁建設計画は、単なる国境防衛の手段としてだけでなく、アメリカの移民政策や人権問題、さらには環境への影響といった多様な要素が複雑に絡み合っています。これに対する国民の関心は今後も続くでしょう。

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