トラヴェンタール条約

トラヴェンタール条約

トラヴェンタール条約は、1700年8月18日にスウェーデン帝国、デンマーク＝ノルウェー、ホルシュタイン＝ゴットルプ公の間で締結された平和条約です。この条約は、大北方戦争の初期段階における重要な出来事であり、デンマークが一時的に戦争から脱落するきっかけとなりました。

条約の背景

17世紀末、スウェーデンはバルト海周辺で強大な勢力を誇っていました。これに対し、デンマーク、ロシア、ポーランドはスウェーデンに対抗するため同盟を結びました。1697年に若くして即位したカール12世がスウェーデン王となると、デンマークはスウェーデンと同盟関係にあったホルシュタイン＝ゴットルプ公領へ侵攻を開始します。これは、デンマークがスウェーデンの勢力拡大を阻止しようとした行動でした。

デンマーク軍がホルシュタイン＝ゴットルプ公領に侵攻したことで、スウェーデンは海洋国家であるネーデルラント連邦共和国とイングランド王国に支援を求めます。英蘭両国は、バルト海でのさらなる紛争を避けるため、スウェーデンを支持しデンマークに圧力をかけます。また、デンマークの侵攻が1689年のアルトナ協定に違反していることも、英蘭両国がスウェーデンを支持する理由の一つでした。

英蘭艦隊の支援を得たスウェーデン艦隊は、コペンハーゲン近くに展開し、デンマークを圧倒します。首都を脅かされたデンマークは、やむなく講和に応じ、トラヴェンタール条約の締結に至りました。

条約の内容

トラヴェンタール条約の主な内容は以下の通りです。

デンマークは、大北方戦争から脱落し、スウェーデンとの武力紛争に加わらないことを約束しました。
デンマークは、スウェーデンの敵と同盟を結んだり、敵を支援したりしないことを誓約しました。
ホルシュタイン＝ゴットルプ公爵の領地は回復され、その軍事力も保証されました。
デンマークは、ホルシュタイン＝ゴットルプが被った戦争費用を支払うことになりました。
* フランス王国、神聖ローマ皇帝、神聖ローマ帝国の諸公爵、アルトナ協定の保証国が、この条約の保証国となりました。

この条約により、デンマークはスウェーデンとの紛争から一時的に離脱せざるを得なくなり、バルト海地域におけるスウェーデンの優位性が確立されました。

条約の影響

トラヴェンタール条約の締結は、大北方戦争の初期段階において大きな影響を与えました。この条約によってデンマークが戦争から脱落したことで、スウェーデンは他の敵国に集中できるようになりました。

ポーランド王でありザクセン選帝侯のアウグスト2世は、スウェーデン領リヴォニアでの戦いで成果を上げられず、トラヴェンタール条約の締結を知ると、スウェーデンとの講和を模索し始めました。一方、ロシアのピョートル1世はプレオブラジェンスコエ条約に基づいてスウェーデン領イングリアに軍を進めました。

デンマークが戦争から脱落すると、カール12世は直ちに軍をバルト海岸のスウェーデン領に移動させました。ロシア軍はイングリアに進軍し、ナルヴァを包囲しましたが、スウェーデン軍はナルヴァの戦いでロシア軍を撃破します。その後、スウェーデン軍はアウグスト2世の軍勢をリヴォニアから追い出し、決定的に打ち破りました。

しかし、1709年のポルタヴァの戦いで、ピョートル1世がスウェーデン軍に大勝利を収めると、戦況は一変します。カール12世はオスマン帝国に逃亡し、デンマークとザクセンはトラヴェンタール条約を破棄して再び戦争に参戦しました。

デンマークの再参戦

トラヴェンタール条約締結後、デンマークは軍の改革に力を注ぎました。傭兵に頼っていた軍隊を、デンマークの地主から提供された平民による徴兵制に移行しました。傭兵はスペイン継承戦争に参戦し、1713年に帰還後、大北方戦争に再び参戦しました。また、農奴制の廃止など、国内の改革も進められました。

フレデリク4世の改革により、デンマークは再びスウェーデンに対抗できる力を取り戻し、大北方戦争の終盤において重要な役割を果たすこととなりました。

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