トリナクリア

トリナクリアとは

トリナクリアという言葉は、シチリア島そのもの、あるいはシチリアを象徴する図案であるトリスケル（三つ足巴）を指す名称として用いられます。この語は古代ギリシャ語で「三つの角」を意味する言葉に由来するとされ、地中海に突き出すシチリア島の三角形の形状を表しています。今日でも、シチリア島の旗には、ゴルゴンの首を中心に三本の足が配されたトリスケルが描かれており、トリナクリアはシチリアのアイデンティティと深く結びついています。

歴史的な変遷と「トリナクリア王」

トリナクリアという名称が歴史的に重要な意味合いを持つのは、13世紀後半から14世紀にかけての時期です。1282年にシチリア晩祷事件に端を発するシチリア晩祷戦争が勃発し、シチリア王国はアラゴン家とアンジュー家が争奪する舞台となりました。長期間にわたる conflict を経て、1302年に締結されたカルタベッロの和約によって、シチリア王国は事実上二つの領域に分裂しました。シチリア島側にはアラゴン家を戴く王国が成立し、イタリア半島南部（ナポリ）側にはアンジュー家を戴く王国が存続することとなりました。この分裂後、シチリア島側の統治者は、かつての「シチリア王」とは区別される形で、「トリナクリア王」という称号を用いるようになりました。一方、半島側の王国は一般にナポリ王国と呼ばれるようになります。これにより、トリナクリアは単なる島の名称や象徴に留まらず、政治的な実体である王国の呼称としても定着したのです。

戦乱期のシチリア貴族社会

シチリア晩祷戦争が継続する不安定な情勢の中で、トリナクリア王国の王領は次々と有力な貴族層に譲渡されていきました。この結果、シチリア島における貴族の権力は著しく拡大し、半島側のナポリ王国と比較しても、より大きな影響力を持つようになりました。特に、1342年にピエトロ2世が亡くなり、まだ幼いルイージが王位に就くと、摂政の人選を巡ってアラゴン系の貴族と、古くから島に根ざす在来の貴族家との間で激しい対立が生じました。この抗争は在来貴族側の勝利に終わりますが、その後両派は徐々に同化していく傾向を見せます。

三大貴族家の影響力

この時代のシチリア貴族社会において、特に大きな勢力を誇ったのが、ヴェンティミーリア家、キアラモンテ家、パッサーネト家でした。これらの有力貴族は、時に協力し、時に激しく争いながら、王国の政治に深く関与しました。ヴェンティミーリア家は、キアラモンテ家との抗争に敗れた後、一時的にシチリアから亡命し、ナポリ王国のアンジュー家と同盟関係を結ぶなど、複雑な動きを見せました。彼らの対立は、王国の stability を大きく揺るがす要因の一つとなりました。

戦争の終結

ルイージ王の後を継いだフェデリーコ3世は、貴族の内紛、特にキアラモンテ家が扇動する反乱や、ナポリ王国からの継続的な攻撃に苦しめられました。王国は内外からの圧力に晒され、困難な状況が続きました。最終的にフェデリーコ3世は、ナポリ女王ジョヴァンナ1世とローマ教皇グレゴリウス11世に対し、ある程度従属する形での講和を受け入れ、ここにシチリア晩祷戦争の一連の交戦状態は終結を迎えました。この講和は、トリナクリア王国が置かれた厳しい立場を反映するものでしたが、長期間にわたる争いに一つの区切りをもたらすこととなりました。トリナクリアという名称は、こうした激動の歴史を経て、シチリア島の象徴としてより一層その意味を深めていったと言えるでしょう。

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