トリニティ・ラバン

トリニティ・ラバン、正式にはトリニティ・ラバン・コンセルヴァトワール・オブ・ミュージック・アンド・ダンスと呼ばれるこの教育機関は、英国の活気あふれる首都ロンドンに根差した、音楽とダンスの分野を専門とするコンセルヴァトワール（高等音楽院・高等舞踊学校）です。その設立は比較的最近の2005年ですが、これは二つの、それぞれの分野において深い歴史と伝統を持つ学校が合併した結果です。一つは音楽教育の歴史を刻んできたトリニティ・カレッジ・オブ・ミュージック、もう一つは舞踊芸術の発展に貢献してきたラバン・ダンス・センターです。現在、トリニティ・ラバンには、将来の音楽家やダンサーを目指すおよそ985名の学生および研究生が在籍しています。彼らは、ロンドンの異なるエリアにある三つの専用キャンパス――グリニッジ（音楽部門が主）、デットフォード、そしてニュー・クロス（ダンス部門が主）――で、それぞれの専門分野に特化した、あるいは分野を横断する教育を受けています。

合併により誕生したトリニティ・ラバンですが、特に音楽部門の母体となったトリニティ・カレッジ・オブ・ミュージックの歴史は、19世紀後半にまで遡ります。この学校は1872年、熱心な教会音楽家でもあったヘンリー・ジョージ・ボナヴィア・ハント牧師によって創設されました。ハント牧師は、当時の英国における教会音楽の質を高めることを目指し、専門的な教育機関の必要性を強く感じていました。設立当初は「教会合唱協会（Church Choral Society）」という名称で活動を開始し、主に教会音楽に携わる人々を対象とした合唱クラスや、教会音楽の指導者育成のためのコースなどを提供していました。当時のイギリス政界を代表する人物の一人であったウィリアム・グラッドストンも、この協会の初期の活動を支援したことが知られています。設立の翌年にあたる1873年には、教育機関としての性格をより明確にするため、「ロンドン教会音楽学校（London Academy of Music for Church Choirs）」へと名称を変更しました。さらに1876年には、既存の教育機関であったトリニティ・カレッジ・ロンドンと合併し、その一員となりました。学校の初期における入学資格には制限があり、男子生徒のみが入学を許され、かつ英国国教会のメンバーであることが条件とされていました。

学校の物理的な所在地も、その長い歴史の中で変遷を遂げてきました。1880年には、ロンドン中心部の文化的な地区に位置するウィグモア通りのマンデヴィル・プレイスに校舎を移転しました。この地は、その後100年以上にわたり、トリニティ・カレッジ・オブ・ミュージックの本拠地として、数多くの音楽家を輩出する拠点となりました。世紀が変わり、2001年になると、学校は新たな本拠地として歴史的な地区であるグリニッジに移転します。

グリニッジに新しく校舎となった建物は、それ自体が豊かな歴史を持つ建造物です。具体的には、旧王立海軍大学の一部であるキング・チャールズ・コートの東翼に位置しています。この建物は、もともと16世紀に建築家ジョン・ウェッブによって、かつてエリザベス1世が生まれたプラセンティア宮殿の跡地に建てられたものです。その後、名高い建築家クリストファー・レンの設計した王立海軍病院に組み込まれ、長らく王立海軍の施設として使用されてきました。

トリニティ・カレッジがこの歴史的な建物を引き継ぎ、教育機関として活用するためには、大規模な改修工事が必要でした。この改修では、王立海軍学校として使用されていた時代に増築されたり変更されたりした部分を、建物の本来の姿を取り戻しつつ、現代の音楽教育に必要な施設を備えるために、慎重に取り除く作業も行われました。特に注目すべきは、新しいリサイタルルームを建設する際の工事中に起こった発見です。建物の構造を調べていく過程で、中心部から予期せぬチューダー朝時代の石組みが出現したのです。これは、現在の校舎が建つ敷地やその構造の一部が、想像以上に古い時代の歴史と繋がっていることを示す貴重な痕跡でした。

このように、トリニティ・ラバンは、現代の最先端の音楽およびダンス教育を提供しつつ、その根幹にはトリニティ・カレッジ・オブ・ミュージックから受け継いだ150年以上の歴史と、歴史的な価値を持つ校舎という、ユニークな遺産を持っています。多様な芸術分野を融合させ、才能ある若者を育成するという使命を、この歴史的な環境の中で果たし続けています。

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