トリプルタップ (映画)

香港映画『トリプルタップ』：驚異の射撃技術と陰謀の渦

2010年公開の香港映画『トリプルタップ』（原題：槍王之王、英題：Triple Tap）は、2000年公開の『ダブルタップ』の続編として制作されました。本作は、香港警察で屈指の射撃スキルを持つ警部チョンと、彼を凌駕する射撃技術を持つ謎めいた男クワンを中心に展開する、サスペンスフルなアクション映画です。

物語は、射撃競技大会から始まります。チョン警部は、高い射撃精度で大会を席巻しますが、最終的に優勝をさらったのは、株のブローカーでもあるクワンでした。クワンは、2発の弾丸を同じ位置に命中させる「ダブルタップ」をはるかに超える、3発の弾丸を同じ位置に命中させる驚異的な技術「トリプルタップ」を駆使し、チョン警部を圧倒します。

しかし、大会直後、予期せぬ事件が発生します。高速道路上を走行中の輸送車が襲撃され、4億ドルもの価値を持つ債券が強奪されたのです。事件現場に居合わせたクワンは、自らの銃で犯人たちと銃撃戦を繰り広げ、犯人3名を含む5名を射殺、さらに白バイ警官1名が重傷を負うという、凄惨な結果となります。

クワンは殺人容疑と銃器不法所持容疑で逮捕・起訴されますが、事件の状況証拠から、凶悪な強盗犯を撃退した英雄として無罪判決を受け、社会から称賛を浴びます。しかし、事件を担当するチョン警部は、クワンの行動に疑問を抱き、事件の裏に隠された陰謀を疑い始めます。

チョン警部は、クワンのトリプルタップという卓越した射撃技術、そして事件当日の行動の矛盾点、さらにはクワンを取り巻く人物たちの言動から、事件の真相解明に乗り出します。捜査を進める中で、チョン警部は、クワンの過去や人脈、そして事件に関与した人物たちの思惑が複雑に絡み合っていることに気づき始めます。

香港の街並みを舞台に、銃撃戦やカーチェイスなどの迫力あるアクションシーンと、緊迫感あふれる推理シーンが交互に展開されます。チョン警部とクワンの対立、そして事件の真相をめぐる攻防は、観客を最後まで飽きさせません。

豪華キャスト陣にも注目です。ルイス・クー演じるクワンは、冷徹な眼差しと高い射撃技術で観客を魅了します。一方、ダニエル・ウー演じるチョン警部は、正義感と鋭い洞察力で事件の謎に迫ります。シャーリーン・チョイ、リー・ビンビンら実力派俳優たちの熱演も、物語に深みを与えています。

『トリプルタップ』は、アクション映画としてのエンターテイメント性だけでなく、人間の心理や正義、そして社会の闇といった深遠なテーマも扱っており、単なるアクション映画として片付けるには惜しい、重厚なドラマ性も兼ね備えた作品と言えるでしょう。トリプルタップという高度な射撃技術、そしてそれを操る男たちの運命、そして隠された陰謀の真相は、最後まで目が離せません。

監督はイー・トンシン、音楽はピーター・カムが担当。香港映画ならではのスタイリッシュな映像と、緊迫感あふれる音楽が、作品の雰囲気をさらに高めています。香港映画ファンのみならず、アクションやサスペンス映画を好むすべての人におすすめしたい、見応えのある一品です。

もう一度検索