トリプルファイヤー

概要

トリプルファイヤー（Triple Fire）は、2006年に東京都で活動を開始した日本の4人組ロックバンドです。早稲田大学の音楽サークル出身のメンバーによって結成され、2010年に現在の4人編成となりました。彼らの音楽性は、特定のジャンルに収まらないユニークなものであり、特にボーカルの吉田靖直が手掛ける文学的でありながら日常のリアリティや皮肉を織り交ぜた独特な歌詞と、ギターの鳥居真道が担う構築的で緻密な作曲・編曲がバンドの核となっています。かつて一部から特定のバンドに例えられることもありましたが、現在の音楽性は多様な要素を取り入れ、常に変化を遂げています。その独自性と表現力は、ミュージシャンや音楽評論家をはじめ、多方面から高い関心を集めています。近年も精力的に活動しており、2024年には7年ぶりとなる5枚目のアルバム『EXTRA』をリリースし、そのリリース記念ライブはソールドアウトとなるなど、現在進行形で進化し続けるバンドです。

来歴

バンドは早稲田大学の音楽サークルにそのルーツを持ちます。2006年、早稲田大学の音楽サークル「Modern Music Troop」にて出会った吉田靖直（ボーカル、当時はギターも担当）、山本慶幸（ベース）、大垣翔（ドラム）の3人によって結成されました。山本は吉田と大垣の1年先輩にあたります。

結成から数年を経て、初期の3人編成での活動に限界を感じた吉田は、2010年に新たなメンバーの加入を検討します。そこで、同じく早稲田大学のサークル「British Beat Club」に所属していた知人である鳥居真道（ギター）を誘い、彼がバンドに加わりました。この加入を機に、吉田はボーカルに専念することとなり、現在の吉田、鳥居、山本、大垣という4人体制が確立されました。

作品リリースは、2012年5月に1stアルバム『エキサイティングフラッシュ』を発表したことから本格化します。その後もコンスタントにリリースを重ね、2014年2月に2ndアルバム『スキルアップ』、2015年9月に3rdアルバム『エピタフ』、2017年11月には4thアルバム『FIRE』を世に送り出しました。

ライブ活動も国内外で展開しており、2014年には今泉力哉監督の映画『サッドティー』の音楽を担当するなど、活動の幅を広げています。同年11月にはKING BROTHERSの渋谷CLUB QUATTRO公演でオープニングアクトを務め、2015年11月には初のワンマンライブ「アルティメットパーティー」を渋谷CLUB QUATTROで開催し成功させました。2016年にはイースタンユース主催のイベント「極東最前線」に出演、そして同年8月には台湾でのライブを行い、初の海外進出を果たしています。日本の主要な音楽フェスティバルへの出演も実現しており、2017年にはフジロックフェスティバル（苗場食堂ステージ）に出演。同年10月には、DJとしても親交のあるピーター・バラカン監修の音楽フェスティバル『Peter Barakan's LIVE MAGIC!』にも出演しました。

特に注目を集めたエピソードとして、2018年1月に行われたカナダのシンガーソングライター、マック・デマルコの来日公演（東京・大阪）のオープニングアクトに抜擢されたことが挙げられます。これは、デマルコが2015年の初来日時に偶然トリプルファイヤーのライブを目撃し、彼らの音楽を気に入ったことがきっかけでした。この交流は、両者によるスプリット7inchシングルのリリースにも繋がっています。また、2018年11月には、それまでにリリースされた全アルバムが主要な音楽配信サービスでサブスクリプション配信が開始され、過去の作品がより多くのリスナーに届くようになりました。

近年の活動

2024年に入り、彼らの活動は再び活発化します。2024年7月17日、約7年ぶりとなる待望の5thアルバム『EXTRA』を7月31日にリリースすることを発表し、先行シングルとして「相席屋に行きたい」が配信されました。アルバムリリース後の8月には、渋谷CLUB QUATTROでリリース記念ワンマンライブ「アルティメットパーティー11」を開催し、チケットはソールドアウトとなりました。さらに、2024年12月には名古屋と大阪で初めてのワンマンライブを行い、活動エリアを拡大しています。

2025年もその勢いは止まらず、2月には東京キネマ倶楽部にてアルバム『EXTRA』を引っ提げたツアーファイナル「トリプルファイヤー EXTRA TOUR FINAL」の開催が決定しています。このファイナル公演の告知と同日には、フジロックフェスティバル'25への出演が発表されるなど、大型フェスへの再出演も決定しました。また、2025年4月1日には「相席屋に行きたい」のCorneliusによるリミックスが配信されるなど、外部アーティストとのコラボレーションも展開しています。2025年7月20日には、これまでのライブとは趣の異なるBillboard Live TOKYOでの「アルティメットパーティー12」が開催されることも決定しており、彼らの表現の多様性と新たな挑戦が続いています。

音楽性・評価

バンド初期には、「高田馬場のジョイ・ディヴィジョン」や、日本のバンドに例えて「だらしない54-71」といった形容で語られることがありました。しかし、年月を経て彼らの音楽性は大きく変化し、現在ではこれらの既成概念にとらわれない独自のスタイルを確立しています。彼らの音楽は、ミニマルなサウンドの中に緻密な構築性を持ち、吉田靖直のシュールで観察眼の鋭い歌詞が乗ることで、唯一無二の世界観を生み出しています。

その独自性は、多くの著名なミュージシャンや音楽関係者からも高く評価されています。イースタンユースの吉野寿、銀杏BOYZの峯田和伸、KING BROTHERSのケイゾウ、KIRINJIの堀込高樹、Base Ball Bearの小出祐介らが、ラジオや雑誌、ウェブなどの媒体で「気になるバンド」としてトリプルファイヤーの名前を挙げています。特に、DJ・音楽評論家のピーター・バラカンは、自身のラジオ番組『BARAKAN BEAT』（InterFM）で彼らの楽曲を何度もオンエアするなど、その音楽性を高く評価しています。また、スカートの澤部渡は彼らの熱烈な支持者として知られ、2ndアルバム『スキルアップ』リリース時には、アルバムについて個人的に語るUstream配信を行ったほどです。澤部はその後も自身のラジオ番組『NICE POP RADIO』（α-STATION FM京都）で複数回にわたりトリプルファイヤー特集を組み、メンバーをゲストに招いています。

メンバー

吉田靖直 (よしだ やすなお) - ボーカル
1987年4月9日生まれ、香川県三豊市出身。早稲田大学第一文学部卒業。バンドの全ての作詞を担当しています。鳥居加入以前はギターも担当し、1stアルバムでは大半の作曲も手掛けました。音楽活動以外にも、大喜利イベント『ダイナマイト関西』やバラエティ番組『タモリ倶楽部』（テレビ朝日）への出演、共感詩イベントでの受賞、雑誌・ウェブへのエッセイ寄稿（3冊の書籍として出版）、俳優（ドラマ・舞台）、ドラマ脚本など、非常に多岐にわたる活動を展開しています。

鳥居真道 (とりい まさみち) - ギター
1987年6月16日生まれ、愛知県碧南市出身。早稲田大学社会科学部卒業。1stアルバム収録の2曲以降、バンドのほとんどの楽曲の作曲・編曲を手掛けており、バンドの音楽的な柱となっています。使用ギターはGibson Melody makerが多いです。ソロでは、おとといフライデーや姫乃たまといったアーティストへの楽曲提供、トクマルシューゴ、スカート、mei eharaなどのアーティストの音源やライブへのプレイヤー参加も行っています。また、選曲家・DJとしても活動し、DJチーム「The KONT」に参加するほか、ピーター・バラカンを含む多くのアーティストとDJイベントで共演しています。音楽関連のトークイベントの主催や、Rolling Stoneなどの媒体への寄稿も多数あります。

山本慶幸 (やまもと よしゆき) - ベース
1986年7月12日生まれ、東京都出身。早稲田大学第一文学部卒業。主な使用ベースはGibson Thunderbird IVやFender Jazz bass '74です。バンド活動と並行して、「LUCKYSOUND」の屋号でギターテックとしても活動しており、ギター工房「Astronauts Guitars」の立ち上げに関わり、楽器の調整、修理、改造、オリジナルギター製作を手掛けています。また、バンド漫画に関する造詣が深く、『CD Journal』や週プレNEWSなどにバンド漫画についての対談やインタビュー記事が掲載された経験があります。

大垣翔 (おおがき しょう) - ドラム
1985年12月15日生まれ、大分県出身。早稲田大学第一文学部卒業。バンドメンバーの中で唯一、音楽活動と並行して会社員（システムエンジニア）として勤務しています。張江浩司（ハリエンタル）、ヒノテツヤ（otori）、ヤマダ（Emily Likes Tennis）と共に、ラジオ番組『ハリエンタルラジオ』をポッドキャストやYouTubeで配信しています。

サポートメンバー

ライブなどに不定期で参加するサポートメンバーとして、シマダボーイ（パーカッション）、遊佐春菜（キーボード）、水谷貴次（キーボード）、沼澤成毅（キーボード）、池田若菜（フルート）がいます。

その他の活動

トリプルファイヤーとして、またはメンバー個人として、音楽制作以外の様々なメディアやプロジェクトにも参加しています。おとといフライデーの楽曲「私ほとんどスカイフィッシュ」への楽曲提供、演奏、MV出演やイベント参加、NHK for Schoolのウェブコンテンツ「ほうかごソングス」における楽曲「ちゃんとした鬼」の提供・演奏、NHK SDGsキャンペーン向けの楽曲提供・語りなどが挙げられます。テレビ、ラジオ、ウェブ配信、雑誌など、多岐にわたる媒体への露出も多く、その活動の幅広さを示しています。

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