トルクステア

トルクステア：ハンドル操作なしに車が曲がる現象

トルクステアとは、自動車の駆動輪に伝わるエンジンの動力が左右で不均等になることで発生する現象です。ハンドルを切っていないにも関わらず、車が勝手に曲がり始めるため、ドライバーにとって危険かつ不快なものです。

発生原因

この現象は、エンジンの出力から左右の車輪へ動力伝達する機構の非対称性から生じます。具体的には、以下の要因が挙げられます。

ドライブシャフトの長さの違い: 左右のドライブシャフトの長さが異なると、トルク伝達の効率が左右で異なるため、トルクステアが発生しやすくなります。
ユニバーサルジョイントの角度: ユニバーサルジョイントは、エンジンの回転運動を車輪の回転運動に変換する部品ですが、角度が付いているとトルク伝達効率に影響を与え、トルクステアを誘発する可能性があります。
エンジンの配置: 特に横置きエンジンのFF車やFFベースの4WD車では、構造上左右のドライブシャフトの長さが異なりやすく、トルクステアが発生しやすい傾向にあります。高出力エンジンを搭載した車両では、この傾向が顕著になります。

これらの要因により、アクセルペダルを急激に踏み込むと、駆動輪に大きなトルクが加わり、トルクステアとして顕在化します。特に、発進時や加速時、路面状況が悪い場合などに発生しやすいです。

対策

かつては、トルクステアは高出力FF車の避けられない欠点とされていました。しかし、近年では電子制御技術の進歩により、その発生は大幅に抑制されています。

トラクションコントロールシステム: 車輪の空転を検知し、エンジン出力やブレーキを制御することで、トルクステアを抑制します。
ドライブ・バイ・ワイヤシステム: エンジンのスロットル制御を電子的に行うことで、アクセル操作によるトルクの急激な変化を制御し、トルクステアを抑制します。
LSD(リミテッドスリップデファレンシャル)：駆動輪の左右の回転速度差を抑制することで、トルクステアの発生を低減します。

これらのシステムにより、多くの車両ではトルクステアは問題とならなくなっています。しかしながら、高性能車やモータースポーツ車両など、大きなパワーを扱う車両では、依然としてトルクステアが発生する可能性があります。

エンジンレイアウトとトルクステア

前述の通り、横置きエンジンのFF車はトルクステアが発生しやすい傾向があります。そのため、アウディやスバルなどの一部のメーカーは、FF車でありながら縦置きエンジンレイアウトを採用することで、左右対称のドライブトレーンを実現し、トルクステアの発生を抑制する技術を採用しています。

まとめ

トルクステアは、自動車の駆動系における非対称性から発生する現象であり、ドライバーにとって危険かつ不快なものです。近年は電子制御技術の進歩により対策が進められていますが、高性能車やモータースポーツ車両では、依然として発生する可能性があり、その発生メカニズムと対策を理解することは、安全な運転のために重要です。 今後、更なる電子制御技術の進化や車両設計の工夫により、トルクステア問題は更に軽減されていくと考えられます。

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