トルコの経済

トルコ経済

西アジアに位置するトルコの経済は、近代化が進む工業・商業部門と、国民の約4割が従事する農業部門から構成されます。産業の発展は地域によって大きく異なり、工業化は主に北西部のマルマラ海沿岸地域に集中しています。一方、観光業が盛んな地中海・エーゲ海沿岸や首都アンカラ周辺を除くと、他の多くの地域では農業の比重が大きくなっています。特に東部では伝統的な地主制度が残るなど経済の近代化が遅れ、地域格差や農村部の貧困が深刻な問題となっています。

トルコ経済は過去、不安定な時期を経験しました。1990年代後半の低迷期には政府債務の増大と急速なインフレーションに苦しみ、2000年の金融危機を経てトルコリラは大幅に下落、経済は大きく落ち込みました。しかし、2002年以降は成長率が回復し、安定政権下でインフレも沈静化しました。2005年には実質的なデノミネーションとして新通貨が導入されています。

産業構造とその特徴

農業

農業はGDPの約7%、全就業者の約18%を占めます（2016年）。従事者数に比してGDPへの寄与率が低いことから、農村部の現金収入は低い傾向にあります。食料自給を重視してきましたが、近年は人口増加などにより食料輸入額が輸出額を上回る状況となっています。トルコ農業の構造的課題の一つは、オスマン帝国時代から続く大地主制度です。特に東部では農地改革が遅れており、この制度が根強く残っています。小規模農家は低価格農産物の影響で所得が減少し、厳しい状況にあります。政府による所得補助なども行われていますが、財政状況の厳しさから十分とは言えません。こうした経済的困難は、国外や大都市部への人口流出を招き、一部農地の荒廃や都市部での社会問題（スラム街の形成など）の一因となっています。

工業

トルコの工業は、建国当初の輸入代替政策により軽工業から発展し、衣服、靴、日用雑貨などの生活用品は国内でほぼ生産可能です。伝統的な産業として、製陶業は現在も盛んです。

繊維産業はトルコの主要産業であり、輸出額の約3分の1を占めます。欧米向けに輸出されますが、中国製品との競争激化が予想されており、デザイン向上や低コスト地域への工場移転などの対策が進められています。

重工業は当初鉄鋼、セメントなどの基礎素材中心でしたが、近年は国内外資本の合弁による自動車生産が大きく発展し、主要な部門となっています。外資系企業の投資も増え、今後の生産拡大が期待されています。ただし、国内の機械や自動車部品の生産能力はまだ十分ではなく、生産設備の輸入依存度が高いという課題があります。

建設業

建設業は国内総生産に占める割合は小さいですが、海外での請負事業を通じて貴重な外貨獲得源となっています。特に中東、北アフリカ、そしてロシアを含む旧ソ連諸国で多くの受注を獲得しています。国内の住宅建設については、かつては高いインフレ率のため住宅ローンが機能しにくく、資金繰りの影響を受けやすい状況でしたが、インフレが鎮静化したことにより住宅ローンが普及し始め、2005年以降は住宅建設の増加が期待されています。

文化産業

2010年代半ば以降、トルコのテレビドラマが新たな輸出産業として世界的に注目を集めています。輸出額は世界第2位とも言われ、特に中東、バルカン半島、そしてラテンアメリカなどで人気を博しています。日本のドラマがトルコでリメイクされ、海外に展開されるといった動きも見られます。

社会問題としての失業

トルコでは、経済成長にもかかわらず、失業率がおおむね10%強という高い水準で推移しています。この主な原因は、毎年多数が労働市場に参入する急激な人口増加です。加えて、近年はかつてあまり見られなかった、大学や高校を卒業した高学歴者の失業が増加しており、社会問題となっています。

近年の経済動向

2021年9月、インフレ対策として行われた異例の利下げにより、トルコリラは急激に下落しました。短期間で価値が大きく減価し、輸入品の高騰など市民生活に影響が出たため、同年12月には、為替変動によるリラ建て預貯金の実質的な目減り分を政府が補填する仕組みが導入されました。

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