トレビアの戦い

トレビアの戦い：ハンニバル、若きローマを打ち破る

紀元前218年12月、イタリア北部のトレビア川付近で、歴史的な戦いが繰り広げられました。第二次ポエニ戦争における「トレビアの戦い」です。カルタゴの名将ハンニバルが、執政官ティベリウス・センプロニウス・ロングス率いるローマ軍を破った戦いとして知られています。

戦いの背景：アルプス越えとローマ軍の分断

ハンニバルは、アルプス山脈を越えてイタリア半島に侵入するという大胆な戦略を実行しました。この奇襲により、ローマは混乱し、プブリウス・コルネリウス・スキピオ率いるローマ軍は、ティキヌスの戦いでカルタゴ軍に敗北。スキピオはプラケンティア（現在のピアチェンツァ）まで撤退し、ロングスの軍団との合流を図ります。その間、ハンニバルはガリア・キサルピナの部族を味方につけ、兵力を増強しました。

両軍の戦力：カルタゴ軍の奇策とローマ軍の油断

合流を終えたローマ軍に対し、ハンニバルは約40,000の兵力でトレビア川を挟んで対峙します。カルタゴ軍は、戦象を先頭に、ガリア歩兵を中央に、リビア・ヒスパニア歩兵を両翼に配置。さらに、ハンニバルは弟マゴに騎兵と軽装歩兵からなる伏兵部隊を率いさせ、密かに川沿いの林に潜ませました。

一方、ローマ軍は約36,000の歩兵（ローマ軍団兵とイタリア同盟都市兵）と約4,000の騎兵を擁していました。ローマ軍は、軽装歩兵を先頭に、歩兵戦列を3列に配置する通常の戦闘隊形をとります。しかし、ロングスはハンニバルの挑発に乗ってしまい、十分な態勢を整えないまま出撃してしまいます。

戦闘の経過：伏兵と騎兵の活躍

12月18日早朝、ハンニバルは騎兵にローマ軍の野営地を襲撃させ、ローマ軍を挑発します。ロングスはこれに乗り、全軍に出撃を命じました。トレビア川を渡河したローマ軍は、攻撃態勢を整え、カルタゴ軍に突撃を開始。ローマ歩兵は、その精強さでカルタゴ歩兵を圧倒し、戦況は一時ローマ有利に進みます。

しかし、両翼ではカルタゴ騎兵がローマ騎兵を破り、ローマ軍の側面に回り込みます。さらに、マゴ率いる伏兵部隊がローマ軍の後方を襲撃。ローマ軍は包囲され、たちまち劣勢に陥りました。ロングスは、正面のガリア歩兵に戦力を集中させ、突破口を開いて撤退を試みます。しかし、半数近くが包囲され、戦場に取り残されました。

戦いの結果と影響：ハンニバルの名声とローマの苦難

トレビアの戦いにおけるローマ軍の損害は20,000名を超えました。一方、カルタゴ軍の損害は軽微で、主に中央のガリア兵でした。ローマ軍は大敗を喫し、プラケンティアまで撤退。ハンニバルの進撃を阻止することは不可能と判断し、北部イタリアを放棄します。

この勝利により、ハンニバルの名声は高まり、ガリア兵のカルタゴ軍への参加が急増しました。ハンニバルは、さらなる戦果を求めてイタリア半島を南下し、ローマを苦しめることになります。トレビアの戦いは、第二次ポエニ戦争の序盤における、カルタゴ軍の戦略的勝利として、歴史に刻まれました。

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