トレブルコーン

トレブルコーン

ニュージーランドのオタゴ地方、美しいワナカ湖畔に位置するトレブルコーンは、南半球にあるユニークなスキー場です。北半球が夏の時期にあたる6月末から10月中旬にかけてシーズンを迎えるため、夏にスキーやスノーボードを楽しみたい人々にとって貴重なデスティネーションとなっています。通常、週末は6月最終土曜日から始まり、10月の第2日曜日まで営業が行われます。営業時間は午前9時から午後4時までです。

このスキー場は、ワナカの北西に広がるハリスマウンテンズの北端、標高2088メートルのトレブルコーン山の東斜面に開かれています。ゲレンデ上部からは、眼下に広がるワナカ湖や、遠方にそびえるアスパイアリング山の壮大なパノラマビューを望むことができます。ゲレンデの構成は、初心者向けが全体の約10パーセント、中級者向けが約45パーセント、そして上級者向けが約45パーセントとなっており、特に上級者向けのコースが充実しています。全体的に斜度のあるコースが多く、数々のシュートが経験豊富なスキーヤーやスノーボーダーを惹きつけています。

年間平均降雪量は2.7メートルを記録し、特に真冬にあたる8月の平均積雪量は1.3メートルに達します。

ゲレンデエリア詳細

トレブルコーンのゲレンデは複数の特色あるエリアに分かれています。

ホーム・ベイズン: ベースセンター直結の中心エリアで、ニュージーランドでは数少ない6人乗り高速リフトがメインを担います。初心者向けの緩やかな「イージーライダー」や、長い圧雪バーンの「メインストリート」のほか、中級から上級者向けの多様なコースが整備されています。
マツキツキ・ベイズン: ホーム・ベイズンからトラバースしてアクセスする、主に上級者向けのエリアです。上部にはマツキツキ渓谷の絶景を望むビューポイントがあります。
パウダー・ボウル: ホーム・ベイズンとイージーライダーの間に位置する、ボウル状に開けた上級者向けエリアです。新雪が降った日など、サドル・ベイズンが雪崩コントロール中の場合でもオープンしていることが多いです。
サドル・ベイズン: トレブルコーンのもう一つの主要エリアで、4人乗りリフトでアクセスします。中級者向けの圧雪コース「ピートズトリート」や「サウスリッジ」がある一方、自然のパイプやシュートなど、多様な地形を楽しめます。エリア上部には、トレブルコーン山頂へ向かうためのゲートがあり、新雪を求めてハイクアップする姿が見られます。
モタタプ・シュート: サドル・ベイズンの奥に広がるシュート群です。スキー場の管理区域内ですが、バックカントリー装備が必要と推奨されます。毎年8月に開催されるビッグ・マウンテン大会の会場にもなっています。
ハリウッド・ボウル: モタタプ・シュートのさらに奥に位置する、最上級者限定のシュートです。滑走後はリフト乗り場まで徒歩で20～30分の登りが必要です。

地元ガイド会社による、モタタプ・シュートへの（半分バックカントリーともいえる）ガイドツアーも提供されています。

リフト施設

合計4基のリフトが設置されており、1時間あたり4,500人の輸送能力があります。内訳は、6人乗り高速リフト、4人乗りリフト、初心者用のTバーリフト（ナイス＆イージープラッター）、そして子供向けのベルトコンベア（マジックカーペット）です。かつて、6人乗り高速リフトはスポンサー名から「フォルクスワーゲン・エクスプレス」と呼ばれていました。4人乗りリフトは、2005年に以前のチェアリフトとTバーを更新して導入されました。

歴史と雰囲気

トレブルコーンは、1967年にMurray Raffills氏とRalph Markby氏によって設立されました。近年投資会社に売却されるまでは、地元の人々によって小規模ながらも経営されていました。この歴史的背景から、ワナカやクイーンズタウン周辺にある他の大規模な商業スキー場とは異なり、地域に根ざした温かみのある雰囲気が今も残り、地元の人々から熱狂的な支持を集めています。

アクセス

ワナカの町からは車で約30分（約29km）、クイーンズタウンからは約90分（約96km）の距離です。スキー場へ続くアクセス道路のうち、最後の約5kmは幅の広い砂利道となっており、急勾配なため運転には注意が必要です。現在、舗装路終点からスキー場までは、有料のシャトルバスが運行されています。

ワナカとクイーンズタウンからは複数のバス会社が路線バスを運行しており、通常は朝6時から8時の間に宿泊施設などを巡回して利用者を乗せ、9時頃にスキー場に到着します。帰りは16時にスキー場を出発し、17時から19時頃にそれぞれの場所に戻るスケジュールです。

2010年の冬シーズンには、クイーンズタウンを拠点とする航空会社が、クイーンズタウン空港からスキー場直下へのセスナ機による送迎サービスを提供していました。このサービスを利用した場合、スキー場までのシャトルバスは無料でした。

スクールとレース

トレブルコーンのスキースクールには、約1名の日本人インストラクターを含む、ヨーロッパアルプスや北米出身のインストラクターが多数在籍しており、少人数制を主体とした質の高いレッスンを提供しています。

トレブルコーン・レースアカデミーは、南半球において最高峰のレーストレーニング機関として知られています。世界各地から生徒が集まり、ニュージーランドのスキーレース競技レベルを世界水準に保つ上で重要な役割を果たしています。トレブルコーンは、コンチネンタルカップなどの主要なスキーレースを開催できる数少ないスキー場の一つでもあります。

その他のサービス

怪我をした場合、海外旅行保険に加入している利用者向けに、ワナカ在住の日本人通訳を経由した無料の医療サービスが提供されています。必要に応じてワナカ町中での医療通訳の手配も可能です。

ベースセンター内にはカフェ・レストランがあり、午前8時から午後4時まで営業しています。屋外にはオープンファイアーが設けられ、トレブルコーンのマスコット的存在である、高山帯に生息するオウムの仲間「ケア」が多数飛来する様子が見られます。

シーズンパス価格の変遷

トレブルコーンのシーズンパス価格は、地元住民にとって重要な関心事でした。2007年の冬シーズンには、価格が2200ニュージーランドドル（早期割引で1500ドル）まで高騰し、「世界で最も高いシーズンパス」と新聞に取り上げられるなど、多くの批判を浴びました。これに対し、スキー場側はゴンドラ建設や環境整備への投資費用などを理由に理解を求めました。しかし、2008年のシーズンは雪質に恵まれたにも関わらず、高価格への反発から地元利用者が減少し、閑散とした状況が続きました。この経営上の損失を受け、投資会社はシーズンパス価格の見直しを経営陣に指示しました。その結果、2009年冬季の価格は990ドルに抑えられ、地元住民からは歓迎されました。

ゴンドラ建設計画

長年にわたり計画されてきたゴンドラ建設計画は、2008年に正式に承認されましたが、その後の不況の影響で計画の具体的な進展は見られていません。計画によると、スキー場へのアクセス道路の起点となるケトル・フラットからベースセンターまで、約3.6kmの距離を約11分で結び、標高差945mを克服し、1時間に2000人の輸送能力を持つ予定でした。この計画は、特に最後の5km区間にあるヘアピンカーブが連続し、ガードレールも少ない急勾配のアクセス道路という長年の課題を解決するものとして期待されています。また、天候の良い新雪の日には1km以上の路上駐車が発生することもあるという、駐車場容量の不足問題の解消にも繋がると考えられています。2004年に発生した、アクセス道路での痛ましい事故も、計画推進の一つの契機となりました。2006年の冬季にチケット販売が好調だったことも、計画が具体的に動き出す要因となりました。地元住民の間では、ゴンドラ建設によるスキー場の混雑を懸念する声もある一方、アクセス改善への期待から概ね好意的に受け止められています。

トレブルコーンは、その挑戦的な地形、壮大な景色、そして地元に根差した温かい雰囲気で、多くのスキー・スノーボード愛好家に愛されています。南半球で最高の冬を求めるなら、訪れる価値のある場所です。

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