ワナカ
ニュージーランド南島、オタゴ地方に位置する町。ワナカ湖の南端、クルーサ川が流れ出す地点に接しており、周囲をサザンアルプス山脈に囲まれた風光明媚な場所にあります。クイーンズタウンからは北東に位置しており、
マウント・アスパイアリング国立公園への主要なアクセスポイントの一つとなっています。
概要
ワナカは、ワナカ湖の南岸に広がり、ハウェア湖にも比較的近い立地です。夏季には温暖な気候の中、ハイキングや登山、釣り、湖での多様なウォータースポーツを楽しむ人々で賑わいます。冬季には、近隣の著名なスキー場(
トレブルコーン、カードローナ、スノーパーク、スノーファームなど)へのアクセスが容易なため、スキーやスノーボードの愛好家が多く訪れます。特に長期滞在の場合、宿泊費が比較的高いクイーンズタウンよりもワナカを選択する人が多い傾向にあります。
この地域は19世紀の
ゴールドラッシュを契機に開拓が始まりましたが、現在はクイーンズタウン・レイク地方を構成する地区の一つとなっています。
人口は
2006年時点で7,008人でしたが、2000年以降は著しい
人口増加が見られ、特に直近10年間では50%を超える増加率を示しています。
歴史
ヨーロッパ人で最初にこの地を訪れたのはナタニエル・チャルマーで、1853年に先住民
マオリの酋長レコを伴った内陸探検の途上でした。
マオリの人々によるこの地域の歴史については、ワイマテの酋長テ・ハルフルが作成した地図からその痕跡を辿ることができます。
1850年代に入ると、ヨーロッパからの入植者による羊の放牧がクルーサ川上流で開始されました。ワナカ周辺で初期に形成された入植地は、クルーサ川を唯一渡渉できる地点にあったアルバートタウンです。その後、
1863年には現在のワナカ中心市街地にあたるペンブローケの測量と入植が進められました。1870年代には、ペンブローケはマツキツキ渓谷上流部で伐採された木材をワナカ湖の水運を利用して運び、製材する拠点として急速に
人口を増加させました。1867年にはセオドア・ラッセルが最初のホテルを開業し、この地域における観光業の礎が築かれました。ペンブローケは、その穏やかな気候と、ウィンタースポーツ・ウォータースポーツに適した環境から、観光地として発展を遂げていきます。1940年には、ペンブローケという名称が現在のワナカに改められました。
地理
ワナカの中心市街地はワナカ湖の最南端に位置し、周囲を複数の山々に囲まれています。南西へ約70km進むと、地域の中心都市であるクイーンズタウンに至ります。北方向へはマカロラ地区を経て、ハースト峠を越えると西海岸地区に接続します。ワナカ湖と並行するようにして、氷河湖であるハウェア湖があり、その周辺には近年開発された住宅地が広がっています。北西方面には、オマラマや
トワイゼルといった内陸の小さな町があります。ワナカからグレンドゥ・ベイのキャンプ場を経由し、マツキツキ渓谷を遡ると、
マウント・アスパイアリング国立公園への入り口があります。
町の中心部は、ワナカ湖のロイズ湾に面した比較的平坦な土地に位置しています。しかし、近年の住宅開発により、ロイズ湾の両側にある丘の上にも町域が拡大しています。春先に豪雨が雪解けを早めたことにより湖の水位が急上昇し、過去にはワナカの中心部が水没した事例もあります(最近では1999年11月など)。
気候
ワナカは、
ニュージーランド国内では比較的珍しい、四季がはっきりとした内陸性気候を持ちます。
降水量は少なく、特に春(9月~12月)以外の季節は乾燥している傾向にあります。年間の平均
降水量は682mmで、国内平均のおよそ半分です。夏季の平均最高気温は約24°Cですが、30°Cを超える日も少なくありません。冬季は晴天の日が多く、比較的温暖で、平均最高気温は10°C前後です。
観光
ワナカは、湖畔の美しい景観とそれを囲む雄大な山々によって、人気の観光地となりました。巨大な観光都市へと変貌を遂げたクイーンズタウンと比較すると、ワナカはより落ち着いた、
ニュージーランドの田舎町らしい雰囲気を保っており、喧騒を避けてゆったりと休暇を過ごしたい旅行者に好まれています。
町には、高級レストランから気軽に立ち寄れるカフェ、バーまで多様な飲食店があり、訪れる人々を飽きさせません。また、
ニュージーランドでは珍しいテーマパーク「パズリングワールド」や、ユニークな内装で人気の映画館「シネマ・パラディソ」といった施設もあります。パズリングワールドは、世界的に知られる3D迷路や不思議な視覚トリックの部屋、傾いた塔などが特徴です。シネマ・パラディソは、座席にソファや自動車のシートが使われているなど、昔ながらの映画館の雰囲気を残しています。
オタゴ中央部の気候と、氷河によって削られた痩せた土壌はブドウ栽培に適しており、近郊には数多くのワイナリーが点在しています。
町の中心部から片道約4時間のハイキングでアクセスできるロイズピークからは、ワナカの町並みと湖、遠くにそびえる
アスパイアリング山までを含む壮大なパノラマビューを楽しむことができます。
アクティビティ
夏のワナカ
夏季のワナカは、世界中からアウトドア愛好家が集まる一大リゾートとなります。トレッキング、マウンテンバイク、登山、釣り、パラグライダー、カヤック、ラフティング、ジェットボートなど、初心者から上級者まで幅広いレベルに対応した多様なアクティビティが可能です。比較的晴天が多い夏のワナカは、こうしたレクリエーションに最適な環境を提供します。
マウント・アスパイアリング国立公園では、登山やトレッキングが特に人気です。この公園は、マウント・クック地区と並び、氷河上を歩いて高山(アスパイリング山など)を目指す登山が可能な場所として知られています。トレッキングルートも豊富で、日帰りハイキングから1週間にも及ぶ縦走コースまで様々です。マツキツキ渓谷沿いには、ロッククライミングの人気スポットや日帰りハイキングに適した場所が多くあります。
ワナカ湖では、ウォータースキーやウェイクボード、ヨットなどのウォータースポーツが盛んです。湖に流れ込む支流やクルーサ川の上流部では、マス(トラウト)釣りが人気です。また、地元のボランティアによって整備された松林の中には、マウンテンバイク用のコースも整備されています。冬期にスキー場として利用される施設も、夏の間はマウンテンバイクやハイキングのベースとして活用されています。
冬のワナカ
ワナカのウィンタースポーツシーンは、
ニュージーランド国内でも特に多様性に富んでいます。ワナカ地区周辺にある
トレブルコーン、
カードローナ・アルパイン・リゾート、スノーパーク、スノーファームといったスキー場は、
ニュージーランドで商業的に最も成功しているスキー場の一部です。これらのスキー場を訪れるスキー客の宿泊地として、ワナカは7月から9月にかけて特に賑わいます。
トレブルコーンは、
ニュージーランド国内のスキーヤーに特に人気があり、「ConeHeads」と呼ばれる熱狂的なファンも存在します。上級者向けのコースにリフトで容易にアクセスできる点に加え、クイーンズタウン・ワナカ地方で最も雪質が良いと評価されています。特に北西からの吹雪の後には、極上のパウダースキーが楽しめます。
カードローナ・アルパイン・リゾートは、初心者やファミリー層に適したゲレンデ構成が特徴ですが、近年は難易度の異なる複数のハーフパイプや大型キッカー、ジブアイテムなどを拡充し、パークライディングを好むスノーボーダーからの支持を集めています。スノーパークは人工雪を100%使用したパーク専用のスキー場です。スノーファームは、
ニュージーランドで唯一のクロスカントリースキー場として知られています。
近年、ワナカ地区は目覚ましい成長を遂げています。
2006年の統計によると、居住
人口は7,008人であり、これは直近5年間で約33%の増加を示しています。車で10分圏内にあるハウェア、アルバートタウン、ラグゲートといった集落でも、
人口増加が顕著です。ワナカ地区における65歳以上の
人口比率は13.2%で、
ニュージーランド全体の平均(12.3%)をやや上回ります。学校卒業後に何らかの資格を保持している人の割合は52.4%で、国内平均よりも12.5%高い水準にあります。
人口構成において、ヨーロッパ系の回答者は全体の82.2%を占め、国内平均より約15%高い比率となっています。失業率は1.9%と非常に低く、国内平均の5.1%を大きく下回っています。子供を持たないカップルの割合は17.4%で国内平均より高い一方、子供を持つカップルは約10%で国内平均より約7%低くなっています。
交通機関
ワナカ中心部から車で約5分の場所にワナカ空港がありますが、2019年10月時点では定期便の運航はありません。かつては
ニュージーランド航空が
クライストチャーチ国際空港への定期便を運航していました。
道路網としては、国道6号線が西海岸方面およびクロムウェル、
ダニーデンとワナカを結んでいます。また、国道84号線はワナカからカードローナ渓谷、クラウンレンジを経てクイーンズタウンに至ります。都市間バスも比較的充実しており、インターシティが西海岸経由フフランツヨセフ氷河村行き、クライストチャーチ行き、クイーンズタウン行きをそれぞれ1日1便運行しています。ワナカコネクションはクイーンズタウン行きを1日3~6往復、
ダニーデン行きを1日1往復運行しています。この他、アトミックシャトルやネイキッドバスなども各方面へ1日1~2便を運行しており、地方の町としては公共交通機関の選択肢が豊富です。
フェスティバル
ワナカでは、年間を通して様々なイベントが開催されます。2年に一度開催される「The Warbirds over Wanaka(ワナカ戦闘機ショー)」は国際的に有名です。その他、「Wanakafest(ワナカ春祭り)」、スノーボードの国際大会「Burton New Zealand Open」、スキーの国内大会「NZ Freeski Open」、毎年2月に行われるレイブイベント「The Rippon Festival」などがあります。