トレヴァー・ピノック

トレヴァー・デイヴィッド・ピノックは、1946年12月16日、イギリスのカンタベリーで生まれました。幼少期から音楽に囲まれた環境で育ち、カンタベリー大聖堂の聖歌隊員として歌声を磨きながら、ピアノとオルガンの演奏を学びました。

その後、ロンドンの王立音楽大学に進学。名教師であるラルフ・ドーンズとミリセント・シルヴァに師事し、チェンバロとオルガンの演奏技術を研鑽しました。在学中から音楽活動に積極的に取り組み、ガリヤード・トリオを結成し、アカデミー室内管弦楽団などに参加するなど、演奏家としてのキャリアを着実に築き上げていきました。

1973年、ピノックは歴史的にも重要な出来事を起こします。オリジナル楽器を用いたオーケストラ「イングリッシュ・コンサート」を設立したのです。このオーケストラは、ピノックの指揮と独奏により、活気に満ちた演奏活動を展開。数多くの録音を残し、世界的な名声を獲得することになります。

ピノックのレパートリーは多岐に渡り、バッハ一族の作品から、ヴィヴァルディ、ヘンデル、ハイドン、モーツァルトといったバロックから古典派までの巨匠たちの作品まで幅広く演奏しました。また、チェンバロ奏者としても卓越した才能を発揮し、小澤征爾指揮ボストン交響楽団との共演で、プーランクのチェンバロ協奏曲「田園のコンセール」を演奏するなど、ジャンルを超えた活躍を見せました。

イングリッシュ・コンサートでの活動以外にも、ピノックは数多くのオーケストラに客演。その卓越した演奏は高く評価され、世界中の音楽ファンを魅了しました。ソロ活動や、レイチェル・ポッジャー、ジャン＝ピエール・ランパルといった著名な音楽家との共演を通じて、チェンバロ奏者としての地位を確固たるものにしました。

2003年、ピノックはイングリッシュ・コンサートの音楽監督をヴァイオリン奏者のアンドルー・マンゼに譲り、自身はオーケストラを退団。しかし、彼の音楽活動は決して終焉を迎えませんでした。

2022年には、日本のオーケストラである紀尾井ホール室内管弦楽団の首席指揮者に就任。新たな舞台で、その豊富な経験と高い音楽性を活かし、日本の音楽界に貢献しています。少年時代からの音楽への情熱を生涯に渡って貫き、時代を超えて愛される名演奏を数多く残した、まさに現代を代表する指揮者、チェンバロ奏者、オルガン奏者と言えるでしょう。彼の音楽活動は、これからも世界中の音楽愛好家にとって、大きな喜びと感動を与え続けることでしょう。

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