トロムソ大学

トロムソ大学（UiT）

トロムソ大学（ノルウェー語: Universitetet i Tromsø, UiT）は、ノルウェー北部の主要都市トロムソに位置する国立大学です。ノルウェーに7つ存在する大学の一つであり、同国北部地域における教育・研究の中核機関としての役割を担っています。特に、その地理的特性から、北極圏の自然環境、文化、社会に関する研究に力を入れており、国際的な北極圏研究の拠点として知られています。

歴史

トロムソに大学を設立する構想は、20世紀初頭に遡ります。1918年、ヌールラン県出身の政治家であり実業家でもあったHans A. Meyerが、この地域における医師と牧師の不足を解消することを目的として、大学設立を提唱しました。トロムソでは、トロムソ博物館（1872年設立）やオーロラ観測所（1928年設立）が先行して科学研究の基盤を築いており、これらの施設が大学設立の土壌となりました。

1962年、ノルウェー北部地域への大学設立が議題に上がり、ナルヴィクとトロムソが候補地として検討されました。1968年3月28日、ノルウェー議会はトロムソ大学の設立を正式に決定しました。同年、オスロ大学がトロムソで哲学史、科学史、方法論などの講座を開講し、これがトロムソにおける高等教育の始まりとなりました。1969年には、Peter F. Hjortが率いる暫定委員会が発足し、大学設立の準備が進められました。そして、1972年、オーラヴ5世国王の臨席のもと、トロムソ大聖堂で開学式が執り行われました。開学当初は、水産学修士課程と医学課程が設置されました。

当初、大学本部および教室はトロムソ市街に置かれていましたが、1978年にブライヴィカ(Breivika)地区に最初のキャンパス施設が完成しました。その後10年間で、キャンパスの拡張が進み、2005年には社会科学棟が完成し、キャンパス整備計画が完了しました。

2007年、トロムソ大学は教育省にトロムソ・ユニバーシティカレッジとの統合を提案し、2008年9月26日に承認され、2009年1月1日に両大学は統合されました。

トロムソ・ユニバーシティカレッジ

1994年8月1日、ノルウェー政府の国立カレッジ改革の一環として、トロムソに所在する以下の4つの国立カレッジが統合され、トロムソ・ユニバーシティカレッジ (Høgskolen i Tromsø) が設立されました。

トロムソ保健大学校：1940年に赤十字北ノルウェー看護学校として設立され、1986年に国立に移管、改称。看護、助産、精神保健、老人介護などを提供。
トロムソ海事大学校：1981年にトロムス県立トロムソ海事高等学校として設立、1988年に国立に移管。航海科学や船舶工学を専門とする。
北ノルウェー音楽院：1971年にトロムソ音楽アカデミーとして設立、1975年に改称、1980年に国立に移管。
トロムソ教育大学校：1826年にハーシュタに設立され、1848年にトロムソに移転した教員養成学校。

これら4つのカレッジの統合により、学生数3,000名、職員数300名からなるユニバーシティカレッジが誕生しました。

キャンパス

メインキャンパスはBreivikaに位置しています。トロムソ・ユニバーシティカレッジから移行した学部学科のうち、保健看護学科はBreivikaキャンパス内にありましたが、他の学部学科はトロムソ市街南部に点在していました。

組織

トロムソ大学は、1970年代の社会科学の隆盛期に設立されたため、考古学、史学、哲学が人文科学ではなく社会科学に分類されているなど、他の大学とは異なる学部構成を有していました。1997年の改組を経て、2009年のトロムソ・ユニバーシティカレッジとの統合により、再び改組が行われました。

学部

健康科学部
法学部
芸術学部
生物学水産学経済学部
人文社会科学教育学部
理工学部

医療関連の教育研究は、北ノルウェー大学病院 (Universitetssykehuset i Nord-Norge, UNN) と連携して行われています。ノルウェー水産大学校は、組織上はトロムソ大学の一学科として位置づけられていますが、学長や校章などで一定の独立性を保持しています。

研究センター

サーミ研究センター
女性研究センター (KVINNFORSK)
平和研究センター (CPS)
理論言語学先端研究センター (CASTL)
理論計算化学センター (CTCC)
国立補助代替医療研究センター (NAFKAM)
国立僻地医療研究センター (NSDM)
ノルウェー構造生物学センター (NorStruct)
海洋資源管理センター (MaReMa)
生涯教育センター (U-VETT)

理論言語学先端研究センター (CASTL) と理論計算化学センターは、高度研究拠点 (COE) に指定されています。

研究上の特色

トロムソ大学は、その立地から、地域の自然環境、文化、社会に関する諸分野に特色があります。

理論言語学
地域医療
水産学
北極圏研究
サーミ語・クヴェン語およびその文学
オーロラ研究・衛星観測
遠隔医療

学生生活

学生自治は、学期ごとの自治会費をもとにトロムソ学生議会によって運営されています。体育会、学生新聞、学生会議、学生協会が運営するイベントホール、学生放送などの活動が行われています。

名誉博士

トロムソ大学は、以下の著名人に名誉博士号を授与しています。

スティーブン・ピンカー
ダライ・ラマ14世
モルデハイ・ヴァヌヌ
サルマン・ラシュディ
ミハイル・ゴルバチョフ
リゴベルタ・メンチュウ
デズモンド・ムピロ・ツツ

その他23名

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