ナルヴィク

ナルヴィク：北極圏の自然と歴史が交錯する町

ナルヴィクは、ノルウェーのヌールラン県に位置する町で、北極圏内にあります。人口は約18,000人、面積は2,000平方キロメートルを超え、周辺のいくつかの地域を管轄しています。その地形は、険しい山々と深く入り組んだフィヨルドによって特徴づけられ、息をのむような美しい景観を作り出しています。

地理と地形

ナルヴィクの東部には山々が連なり、スウェーデンとの国境を形成しています。最も高いストルステイン山は標高1894メートルに達し、その山頂付近には湖や谷が点在しています。ナルヴィクの市街地は、オーフォートフィヨルドの奥深くに位置し、周囲を1500メートル級の山々に囲まれています。フロスティセン氷河など、氷河地形も見られ、山頂には夏でも雪が残ります。標高の低い場所には豊かな森林が広がり、自然の多様性に富んでいます。また、ナルヴィクにはアルペンスキー場も設けられており、一部のコースは市街地近くまで続いています。

ナルヴィクは北極圏から220km圏内に位置する、世界でも有数の高緯度都市です。しかし、北大西洋海流の影響で、気温は比較的温暖です。山々に囲まれた地形が強風を遮るため、気候は穏やかです。年間平均気温は3.7℃で、1月の平均気温は-4.4℃、7月の平均気温は13.4℃です。植物が生育できる期間は約155日と比較的長く、ガーデニングを楽しむ住民も多くいます。

歴史

ナルヴィクは、第二次世界大戦の初期において、ドイツ軍にとって戦略的に重要な拠点でした。ドイツの軍需産業は、スウェーデンの鉄鉱石に依存しており、冬期には凍結するボスニア海に代わり、不凍港であるナルヴィクを経由した輸送が必要不可欠でした。ナルヴィクはスウェーデンと鉄道で繋がっていましたが、ノルウェーの他の地域とは繋がっておらず、スウェーデンの鉱石地へのゲートウェイとなっていました。

イギリスのチャーチル首相は、ナルヴィクを支配することでドイツへの鉄鉱石輸送を遮断できると考えました。連合国はナルヴィクを占領することで、大戦の早期終結を目指しました。しかし、ドイツ軍もナルヴィクを支配すれば、連合軍の補給線に脅威を与える可能性がありました。

1940年、イギリスはナルヴィク周辺のノルウェー領海に機雷を設置する作戦を開始。その翌日には、ドイツがノルウェーに侵攻を開始しました。ナルヴィクにはドイツの駆逐艦が送り込まれ、ノルウェーの海防戦艦と交戦しました。イギリス海軍はただちに艦隊を派遣し、ナルヴィク海戦が勃発。連合軍はドイツ軍を駆逐し、海岸線を支配しました。

1940年5月28日、連合軍はナルヴィクを奪還し、第二次世界大戦における連合軍初の歩兵部隊による勝利となりました。しかし、連合軍はフランス侵攻で敗戦し、ダンケルクからの撤退を余儀なくされていました。ナルヴィクに展開していた貴重な軍隊が他の地域で必要となったため、連合軍は6月8日にナルヴィクから撤退しました。その後、ノルウェー軍はドイツ軍に降伏しましたが、内陸部ではゲリラ戦が続けられました。

ナルヴィクのフィヨルドは、ドイツ海軍にとっても重要でした。戦艦をイギリス空軍の空爆から退避させ、Uボートの基地としても利用されました。

気候

ナルヴィクでは、11月中旬から4月初旬まで平均気温が氷点下になります。夏には雪解けが始まりますが、標高の高い場所では雪が残ります。5月から10月中旬までは平均気温が5℃を上回り、夏は6月から9月まで続き、日中の気温は10℃から26℃の間です。最高気温は31℃、最低気温は-20℃を記録します。降水量は10月が最も多く110mm、5月が最も少なく40mmで、年間平均降水量は830mmです。

日照時間は季節によって大きく異なり、11月下旬から1月中旬にかけては、太陽が地平線よりも低いため、日中でもわずかな青い光が差す程度です。逆に3月から4月にかけては日差しが強く、5月下旬から7月中旬にかけては白夜となり、一日中日が差します。

気候区分では、亜寒帯湿潤気候（Dfc）と西岸海洋性気候（Cfc）の境界付近に位置づけられます。

交通と経済

ナルヴィクは、この地域の商業と交通の中心地であり、鉄道輸送と海運が盛んです。北ノルウェーからの貨物はナルヴィクを経由して輸送され、東アジアから北東アメリカへの船舶の中継地としても計画されています。ナルヴィク大学には約1200人の学生が在籍し、ハイテク企業もいくつか存在します。

ナルヴィクは、1887年にキルナ鉱山の積出港として設立され、オーフォート鉄道がスウェーデンのキルナとナルヴィクを結んでいます。ナルヴィクとボーデの間には鉄道が通っていないため、国外に出ずに鉄道で他都市に移動することはできません。市内にはナルヴィク空港（フラムネス）とハシュタ/ナルヴィク空港（エヴェネス）の2つの空港があります。

観光

ナルヴィクは、アルペンスキーの名所として知られています。また、ファーガネスへのケーブルカーがあり、山へのハイキングも人気です。フィヨルドや湖での釣りも楽しめます。第二次世界大戦中に沈没した船はダイビングスポットにもなっています。ショーメン、ベイスフィヨルド、ベルクヴィクの河川は鮭の産卵場所であり、ショーメンにはゴルフ場もあります。住宅は明るい色彩で塗装されていることが特徴です。

姉妹都市

ナルヴィクは、以下の都市と姉妹都市提携を結んでいます。

キキンダ（セルビア）
ロヴァニエミ（フィンランド）
キルナ（スウェーデン）
ノヴィ・ソンチ（ポーランド）
キンギセップ（ロシア）
マイケルジョッキ（フィンランド）

ナルヴィクは、その歴史と自然が織りなす魅力的な町です。ぜひ一度訪れてみてください。

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