トワイライト・サーガ

トワイライト・サーガ

『トワイライト・サーガ』は栗本薫が手がけるヒロイック・ファンタジーのシリーズで、短編が連なる形で構成されており、全2巻にまとめられています。この作品は、著者の別のシリーズである『グイン・サーガ』の何千年後の未来が舞台であるものの、実際に筆を取ったのは『トワイライト・サーガ』が先でした。

物語は、闇王国パロスの美貌の王子であるゼフィールと、草原の国トルースの戦士ヴァン・カルスが共に旅をする中で遭遇する数々の怪異を中心に展開されます。このシリーズは魔道に満ちた要素が強く、ファンタジーの醍醐味を存分に味わえる内容となっています。

初めて発表された短編『カローンの蜘蛛』は、1982年12月の『S-Fマガジン』臨時増刊号に掲載されたもので、実は作者がデビュー前の1974年に応募したコンテストに落選した作品に基づいています。さらに、1972年から1973年の間には、他の作品も執筆していたことが明らかになっています。

その後、作者が早川書房に保管されていた初出作品を雑誌に掲載するため、全てのシリーズ作品のタイトルを改めてリストにしたところ、ファンからの刊行要望が高まり、結果として1983年と1984年に光風社出版から刊行される運びとなりました。初期には「迷路島」までの9作品しか完成していませんでしたが、第2巻『カナンの試練』が発行される際に、第10作である「死者の珠」が新たに執筆されたという背景があります。

光風社出版からの単行本としての刊行後、1986年には角川文庫からも発行され、表紙のイラストは著名なイラストレーター天野喜孝が担当しました。1巻ではゼフィール王子の正面からの姿が、2巻では横顔が描かれています。また、『カナンの試練』のあとがきによると、第3巻ではゼフィールの後ろ姿が描かれ、驚きの真実が明かされる予定でしたが、残念ながら第3巻の刊行は実現せず、作者の死去に伴いその構想は未完に終わりました。

書誌・収録作品

• - カローンの蜘蛛

光風社出版 1983年8月15日発行 / ISBN 4-87519-453-6
角川文庫 1986年6月10日発行 / ISBN 4-04-150015-X

• - カナンの試練

光風社出版 1984年8月20日発行 / ISBN 4-87519-465-X
角川文庫 1986年6月25日発行 / ISBN 4-04-150016-8

その他収録作品には、以下のようなタイトルがあります：

• - 蛇神の都
• - 滅びの島
• - 暗い版図
• - 双子宮の陰謀
• - リリス
• - ルカの灰色狼
• - 迷路島
• - 死者の珠

グイン・サーガとの関係

『トワイライト・サーガ』は時代が異なるため、登場人物に共通点はありませんが、神々や国の名前にはいくつかの共通点が見受けられます。たとえば、ヤヌスやドール、ヤーン、モスといった神々やパロス、トルース、アグラーヤなどの国の名前が挙げられます。

さらに、『カローンの蜘蛛』に登場するパロスの偉大皇帝コルラ・タルスは、吸血皇帝コルラ・サーンの父であり、『グイン・サーガ』の第3巻においてもコルラ・タルスの名前が見受けられることで、何らかの関連が感じられます。また、第44巻『炎のアルセイス』では、主人公のグインが語る幻視の中に『カローンの蜘蛛』のある場面が出現します。こうした繋がりは、ファンにとって魅力的な要素の一つとなっています。

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