トン族

侗族（トンぞく）について

侗族は中国に住む少数民族の一つで、主に貴州省、広西壮族自治区、湖南省に生息しています。彼らの人口はおおよそ250万人と推定されており、特に貴州省には140万人近くの侗族が暮らしています。最近では、その独特の文化や観光地としての魅力が評価され、注目を集めています。

文化と言語

侗族はタイ・カダイ語族に属する侗語を話しますが、文字を持たず、主に漢字を用いて表現されています。侗語の表記には様々な方法があり、主に漢字の音訓をあてはめたり、最近開発された侗音表記が用いられています。これにより、侗族は豊かな口承文化を持つ一方、書かれた記録が少ないという特徴があります。

伝統的な生活様式

侗族の家庭は多くの場合、木造の高床住居で、親子数世代が同居するスタイルが一般的です。特に兄弟のうち年長の者は、成人後に独立することが多いです。結婚年齢は早く、通常十代後半で結婚します。敬老精神が根強い一方で、子供は貴重な労働力とみなされ、二人以上の子供を持つ家庭が多い傾向にあります。これは政府からの課税があるにもかかわらず、侗族の家族は子供を歓迎するための文化的背景が影響しています。

また、男女はそれぞれ別の集団を作り、共同作業に取り組むことが多いです。家名は主に父系で伝承されるため、男児が好まれる傾向にありますが、相続は父から息子へ、母から娘へと両方の系統で行われます。

祭りと信仰

侗族はアニミズム的な宗教観を持っています。特に渓流や山に神が宿ると信じられ、「薩歳」と呼ばれる女神の祠が村ごとに存在し、春節の時期に祭りが行われます。また、侗族の歌唱や舞踊も宗教的な意義を持ち、特に「トン族大歌」と呼ばれる伝統音楽は、ユネスコの無形文化遺産に登録されています。この歌は女性たちによって次の世代へと伝えられ、鼓楼周辺では定期的に演奏される光景が見られます。

伝統的な建築と観光

侗族における代表的な建築物としては、釘を使わずに杉材で構造される鼓楼があります。この鼓楼は集会や祭りの場として利用され、貴州省黔東南の黎平県の肇興村では五つの鼓楼が存在することで有名です。また、風雨橋と呼ばれる木造の屋根付き橋も多く見られ、広西壮族自治区の程陽永済橋は世界遺産に登録申請中とされ、観光名所となっています。

現代の侗族

現代の侗族は、伝統的な生活様式を守りながらも観光や民芸品の製作を通じて、生計を立てています。特に民芸品や刺繍は観光客に人気で、侗族の独特な文化を広める手段として用いられています。また、若者たちの中には民族音楽の奏者としての活動を通じ、経済的な基盤を築いている者も多くいます。

侗族は、その豊かな文化背景や美しい自然環境の中で、今もなお独自の伝統を守り続けています。

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