トーキン・アバウト

グラント・グリーンによるアルバム『トーキン・アバウト』（原題：Talkin' About!）は、1964年に録音され、翌1965年に世に送り出された彼のリーダー作の一つです。

本作の大きな特徴は、革新的なオルガン奏者であるラリー・ヤングが、グリーンのリーダー・セッションに初めて参加した点にあります。二人の相性の良さは録音後にすぐに証明され、このアルバムの録音からわずか2ヶ月後の1964年11月には、今度はヤングのリーダー作『イントゥ・サムシン』（こちらも1965年発表）にグリーンがギタリストとして招かれるという、密接な協力関係が構築されました。この二人の共同作業は、ジャズ史においても重要な意味を持つものとなります。

本作の演奏は、ギター、ハモンドオルガン、ドラムスという、ジャズにおける典型的なオルガン・トリオ編成で行われています。グリーンとヤングに加えて、ドラムスには名手エルヴィン・ジョーンズが参加。この強力な布陣により、緊密かつ躍動感あふれるアンサンブルが実現しています。

収録曲は全5曲。アルバムタイトルにも冠されているオープニングナンバー「トーキン・アバウトJ.C.」は、ラリー・ヤングによって作曲され、偉大なサックス奏者ジョン・コルトレーンに敬意を表して捧げられた楽曲です。11分を超えるこの長尺の演奏は、各プレイヤーのソロが存分に展開され、アルバム全体の方向性を示す重要なトラックとなっています。

その他、ミュージカル『ジプシー』からのスタンダードナンバー「ピープル」、ラリー・ヤングによるオリジナル曲「ルーニー・チューン」、情感豊かなバラード「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ」、そしてカントリー調の異色カバー「俺らは老カウボーイ」と、多彩な楽曲が収録されています。どの曲においても、グリーンのメロディックでブルージーなギタープレイと、ヤングの実験的で深みのあるオルガン、そしてジョーンズのパワフルかつ繊細なドラミングが見事な調和を見せています。

音楽評論家たちの評価も高く、例えばスティーヴ・ヒューイは音楽データベースサイト「オールミュージック」において、本作に5点満点中4.5点を与えています。彼はこのオルガン・トリオによる演奏を、「グラント・グリーンの初期作品に見られるソウル・ジャズの温かみと、その後のキャリアで探求されることとなるモーダルな響きが見事に融合した、魅力的な成果である」と評しました。この評価は、本作が単なるソウル・ジャズに留まらない、グリーンの音楽性の変化と発展を示す重要な過渡期の作品であることを示唆しています。

『トーキン・アバウト』は、グラント・グリーンの数あるリーダー作の中でも、ラリー・ヤングとエルヴィン・ジョーンズという最高のパートナーを得て、オルガン・トリオというフォーマットで彼の魅力が開花した傑作として、今日でも多くのジャズファンに聴き継がれています。グリーンのギターとヤングのオルガンが織りなすインタープレイは聴きどころであり、ジャズ史におけるオルガン・トリオの重要なレコーディングの一つとして位置づけられています。

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