トークンバス

トークンバス（Token Bus）とは

トークンバスは、ネットワークにおけるデータ伝送方式の一種で、同軸ケーブル上に仮想的なリングを構築し、トークンリングプロトコルを利用します。この方式では、ネットワーク上のノードがトークンを順番に受け渡し、トークンを保持しているノードのみがデータを送信できます。これにより、ネットワーク上でのデータ衝突を回避し、効率的なデータ伝送を実現しています。

仕組み

トークンバスの動作原理は以下の通りです。

1. 仮想リング: ネットワークに接続された各ノードは、論理的なリング状に配置されていると見なされます。物理的な配線は必ずしもリング状である必要はなく、多くの場合バス型トポロジーで構築されます。
2. トークンの巡回: トークンと呼ばれる特別なデータパケットが、仮想リング上を順番に巡回します。トークンは、ネットワーク上で送信権を表す役割を持ちます。
3. 送信権: トークンを受け取ったノードは、データ送信を行う権利を得ます。送信すべきデータがある場合、そのデータを送信し、完了するとトークンを次のノードに渡します。送信すべきデータがない場合は、トークンをそのまま次のノードに渡します。
4. ノード管理: 各ノードは、仮想リング上での自身の前後のノードのアドレスを知っている必要があります。また、ノードの追加や削除時には、ネットワーク全体が適切に動作するように、特別なプロトコルが必要となります。

主な用途

トークンバスは、特に産業環境での利用を想定して開発されました。IEEE 802.4ワーキンググループによって標準化され、製造業における自動化システムなど、リアルタイム性が求められる環境で多く利用されました。

例:

ゼネラルモーターズが提唱したManufacturing Automation Protocol（MAP）規格では、トークンバスが通信プロトコルとして採用されました。

トークンリングとの比較

トークンバスとよく比較されるのがトークンリングです。トークンリングでは、物理的なリング状のネットワーク構成が用いられますが、トークンバスは物理的にはバス型ネットワークでも動作します。また、トークンバスはネットワーク構成の柔軟性が高く、より大規模なネットワークを構築しやすいという特徴があります。

メリットとデメリット

メリット:

確実なデータ伝送: トークンを持つノードのみが送信できるため、データ衝突を回避できます。
公平性: 各ノードは順番に送信権を得られるため、特定のノードがネットワークを独占することを防ぎます。
リアルタイム性: データ伝送の遅延を予測しやすく、リアルタイム性が求められる環境に適しています。

デメリット:

実装の複雑さ: 仮想リングの管理やトークン巡回のためのプロトコルが複雑であり、実装や維持管理が難しい場合があります。
パフォーマンス: ネットワークの規模が大きくなると、トークンの巡回に時間がかかるため、パフォーマンスが低下する可能性があります。

関連技術

トークンリング: トークンリングプロトコルを採用したネットワーク方式。
IEEE 802: ネットワークに関する標準規格を策定するワーキンググループ。
ARCNET: トークンパッシング方式を採用したネットワーク技術。
バス (コンピュータ): ネットワークトポロジーの一種。

外部リンク

Token bus at Linktionary.com
Token bus protocol

トークンバスは、産業分野における信頼性の高いネットワーク技術として一定の役割を果たしましたが、より高速で効率的なネットワーク技術の発展に伴い、近年では利用が減少しています。

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