トータル・フィアーズ (The Sum of All Fears)
「トータル・フィアーズ」は、
2002年に公開されたアメリカのスパイアクション映画であり、トム・クランシーのベストセラー小説「恐怖の総和」に基づいています。この作品は、ジャック・ライアンシリーズの一部として知られており、パラマウント映画の創立90周年記念作品として制作されました。
映画の概要
本作では小説の内容にいくつかの変更が加えられています。特にテロリストの設定が注意を引きます。原作においては中東の反米活動グループが反乱者として描かれていましたが、2001年の
アメリカ同時多発テロ事件を受け、映画ではネオナチやKKKなどの極右勢力がテロリストとされています。このような設定は、テロリストが国家を超えて連帯するという少し不自然な描写を引き起こしています。
また、悪役であるドレスラーのキャラクターには、冷戦時代の反米・反
ロシア感情が色濃く反映されています。劇中のセリフには、クリントン元大統領とモニカ・ルインスキーとの不倫スキャンダルを揶揄する内容があり、これがドレスラーのアメリカに対する敵意を象徴しています。
主人公のジャック・ライアンについても設定が変更されました。小説ではCIAの情報担当副長官である彼が、本作では博士号を持つCIAの若手アナリストとして描かれています。この変更はキャラクターの若返りを意図したものとされ、他のジャック・ライアン作品との整合性が少しずれていると言われています。
あらすじ
映画は1973年、第四次中東戦争から始まります。劣勢に立たされた
イスラエル軍は、戦術核兵器を用いて戦局を有利に進めようとしましたが、地対空ミサイルに撃墜され核爆弾は砂漠の中に埋もれてしまいます。この核爆弾が後にテロリストの手に渡ることになります。
数年後、
ロシアでは新大統領が就任し、米ロ関係は緊張の一途を辿ります。CIA長官キャボットとジャック・ライアンは、状況を改善するために
ロシアに派遣されますが、同時にネオナチやKKKが戦争を煽る動きを見せます。そして、ボルチモアのスタジアムで核爆発が発生します。
ライアンは真相を追い求める中、アメリカの混乱が深まります。テロリストによって揉まれた事実を知り、彼は両国の首脳に真実を伝えようと奮闘しますが、アメリカ本土に対して報復攻撃が起きる危機が迫ります。誤解と混乱の中で、両国の指導者たちは決定を下し、最終的な結末を迎えます。
結末
ライアンは政府に単独で乗り込み、指導者との直接交渉を試みます。緊迫した状況の中、彼は冷静さを保ちながら「恐怖の連鎖」を断ち切るため、交渉の成功を目指します。彼の冷静な判断が最悪の事態を回避し、米ロ両国は停戦協定の席につくことになります。最終的に、事件の背後にあった陰謀と実行者たちは一掃され、物語は幕を閉じます。
「トータル・フィアーズ」は、ただのスパイ映画ではなく、国際政治の緊迫した瞬間を描いた作品として、観客に深い印象を与えています。