トーマス・ソマスケールズ

トーマス・ソマスケールズ：海を描き続けた英国人画家

トーマス・ソマスケールズ（Thomas Somerscales, 1842年10月29日 - 1927年6月27日）は、イギリス生まれの画家であり、同時に熟練した航海士でもありました。彼はチリに渡り、航海術の教師として働きながら、その才能を絵画の世界で開花させました。特に、「硝石戦争」における海戦の様子を描いた一連の作品は、彼の名を不朽のものとしています。

生い立ちと航海士としてのキャリア

ソマスケールズは、1842年にヨークシャーのキングストン・アポン・ハルで、船員の息子として生を受けました。幼い頃から海に親しみ、叔父がアマチュア画家であったことも、彼の芸術への関心を育む一因となりました。1863年、彼はイギリス海軍に雇用され、練習船HMS Cumberlandで航海術の教官として、6ヶ月間に及ぶ太平洋航海に参加しました。その後も5年間、教官として練習航海に携わり、計4度の航海を経験しました。

チリでの画家としての転身

1869年の夏、ソマスケールズはパナマでマラリアに感染し、チリのバルパライソで下船を余儀なくされました。病からの回復は遅れ、彼はイギリス海軍を解雇されます。しかし、このことが皮肉にも、彼を画家としての道へと導くことになります。チリに留まることを決意したソマスケールズは、精力的に絵を描き始め、1872年にはサンティアゴで開催された国際美術展に3点の作品を出品し、銀メダルを受賞しました。

1875年、彼はチリの軍艦に乗船する機会を得て、バルパライソ沖で嵐と戦う軍艦の姿を目の当たりにし、強い感銘を受けました。この経験がきっかけとなり、彼は軍艦をはじめとする船を主な題材として描くようになります。

「硝石戦争」と海洋画の確立

1879年から1884年にかけて、チリ、ボリビア、ペルーの間で繰り広げられた「硝石戦争」は、ソマスケールズの画業に大きな影響を与えました。彼はこの戦争における海戦の情景を数多く描き、特にチリ海軍とペルー海軍が激突したイキケの海戦を描いた作品は、彼の代表作として広く知られています。硝石戦争後も、彼は南米沖を航行する商船を主な題材として描き続けました。

英国への帰国と晩年

1892年、ソマスケールズはイギリスに帰国し、翌年からロイヤル・アカデミー・オブ・アーツの展覧会に作品を出品するようになりました。1928年までに、彼の作品は28点も展示され、その才能は広く認められました。この間、彼は何度もチリを訪れ、精力的に作品を制作しました。

ソマスケールズの作品は、現在、テート・ギャラリーやグリニッジの国立海事博物館、彼の故郷であるキングストン・アポン・ハルの美術館、そしてサンティアゴの美術館などに収蔵されており、彼の海洋画は、今も多くの人々を魅了し続けています。

主な作品

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参考文献

(参考文献情報)

外部リンク

Somerscales in der Tate Gallery

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