トーマス・モラン

トーマス・モラン

トーマス・モラン（Thomas Moran）は1837年2月12日にイギリスのボルトンで生まれたアメリカ合衆国の画家です。彼はアメリカの風景を描いたハドソン・リバー派の一員として知られ、またアメリカ西部の壮大な自然を描いた作品から、ロッキーマウンテン派の画家とも称されています。彼の絵画はアメリカの自然が持つ美しさを捉えており、多くのファンを魅了しています。

生い立ちと初期のキャリア

モランの家族は1844年にアメリカに移住し、メリーランド州に定住しました。彼の両親は職布職人で、兄は海洋画家のエドワード・モランです。トーマスは青年時代、フィラデルフィアにある木版画出版社、Scattergood & Telferで働き始め、その間に水彩画を描く楽しさに目覚めました。特にイギリスの画家ウィリアム・ターナーの影響を強く受け、彼の画集を通じてその作品に感銘を受ける経験が、モランの芸術表現に大きな影響を与えました。

1862年にはターナーの作品を直接観るためにイギリスを訪れ、その後の彼の制作活動においてターナーのスタイルが見られるようになりました。彼の木版画は有名な雑誌に掲載され、彼の名声を高める要因となりました。また、兄からさまざまな版画技法を学び、水彩画や油彩画でも高い評価を得て、多色版画作品も人気を博しました。

探検とイエローストーン

1865年にメアリー・ニモと結婚したモランは、1871年にアメリカ地理・地質調査局のフェルディナンド・ヴァンデヴィア・ヘイデンのイエローストーン地域への探検調査隊に参加する機会を得ます。この探検には約50人の隊員が参加しており、モランは「フィラデルフィアで最も才能のある画家」として推薦され、選ばれました。

彼は探検中に30ヶ所以上の風景をスケッチし、探検隊の活動を記録しました。モランの描いた風景画は後に多くの人々にイエローストーンの美しさを知らしめ、1872年にはアメリカ初の国立公園として指定されるのに寄与しました。彼のスケッチや、同行した写真家ウィリアム・ヘンリー・ジャクソンの写真は、当時の人々に自然保護の重要性を訴えるきっかけとなりました。

その後の作品と評価

探検を終えたモランは、アメリカ各地の美しい風景を描き続けました。彼の作品は風景画としての美しさと、国立公園の設立に対する寄与から評価され、1884年にはナショナル・アカデミー・オブ・デザインの会員にも選ばれました。

トーマス・モランは1926年8月25日に亡くなりましたが、彼の作品は今なお多くの人々に愛され続けています。彼が描いた風景画は、アメリカの自然の一部として、今もなお観る者の心に響き、その美しさを感じさせてくれます。

もう一度検索