ナショナル・アカデミー・オブ・デザイン

ナショナル・アカデミー・オブ・デザイン：アメリカ美術を彩る歴史と現在

ナショナル・アカデミー・オブ・[デザイン]は、アメリカ合衆国の美術史において重要な役割を果たしてきた、由緒ある芸術家の名誉団体です。1825年、ニューヨークでサミュエル・モース、アッシャー・ブラウン・デュランド、トマス・コールといった著名な芸術家たちによって設立されました。その目的は、展覧会開催や教育活動を通じたアメリカ美術の振興です。

設立と揺籃期

アカデミーの設立は、既存の美術教育機関への不満から始まりました。当時の学生たちは、既存の機関からの支援不足を感じており、より充実した教育環境を求めていました。モースら学生たちは、独自の「絵画協会」を結成し、自主的な学習活動を開始します。しかし、既存の機関との意見対立を乗り越えることができず、最終的に新たなアカデミーの設立へと至ります。

モースはロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツをモデルとして、ナショナル・アカデミーを組織しました。当初から、展覧会と教育によるアメリカ美術の振興という明確な使命を掲げていました。石膏デッサンの授業から始まり、次第に多くの優秀な画家を育成し、発展を遂げていきます。19世紀半ばには、既存のアメリカ美術アカデミーが活動を停止し、ナショナル・アカデミーはアメリカを代表する美術アカデミーとしての地位を確立しました。

発展と変化

19世紀後半になると、ヨーロッパ留学経験を持つ芸術家を中心に、アカデミーの運営や教育方法に対する批判が高まりました。より自由な表現や革新的な教育を求める声から、アメリカ芸術家協会や「テン・アメリカン・ペインターズ」といった新たな団体が設立され、ナショナル・アカデミーに対抗する勢力が台頭しました。美術学校としては、アート・スチューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨークが創設されました。これらは、アメリカ美術界における多様な表現と競争の激化を示しています。

2015年には財政難に陥り、美術館や美術学校の閉鎖、不動産売却といった苦境を経験しました。しかし、その後は教育ツールとしての芸術の重要性を再確認し、公共における芸術家の役割を強調するなど、新たな活動に力を入れています。

名称と活動場所

設立当初から幾度か名称変更を経て、1828年に「ナショナル・アカデミー・オブ・デザイン」に落ち着きました。しかし、1997年には「ナショナル・アカデミー・ミュージアム・アンド・スクール・オブ・ファインアート」と改称されましたが、2017年に元の名称に戻されています。「デザイン」という言葉の解釈の変化への対応と、美術館・美術学校を含む組織全体の統合を示す意図があったと推察されます。

活動場所も幾度か変わっています。マンハッタンの様々な場所で活動し、特に1942年から2019年までは、5番街89丁目の邸宅を拠点としていました。この邸宅は、彫刻家アンナ・ハイアット・ハンティントンと慈善家アーチャー・ミルトン・ハンティントンからの寄贈によるものです。

組織と活動、関連人物

ナショナル・アカデミーは、プロの芸術家の名誉団体であり、美術学校と美術館を併設しています。会員はアメリカ人芸術家・建築家450名に限定されており、高い評価を得た者だけが選出されます。会員は、"NA"の称号を使用することができます。

アカデミーのコレクションは、会員が自ら制作した作品を中心に構成されており、8000点を超える作品を誇ります。大規模な展覧会開催や作品貸出、分野を超えた研究促進など、多様な活動を行っています。

著名な講師として、ウィル・ハイコック・ロー、チャールズ・ルイス・ヒントンなどがおり、詩人のウィリアム・カレン・ブライアントや建築家のアレクサンダー・ジャクソン・デイビスも講義を行っていました。レミュエル・ウィルマースは最初の専任講師、サイラス・ダスティンは学芸員を務めました。

ナショナル・アカデミー・オブ・デザインは、アメリカ美術の発展に多大なる貢献を果たしてきた機関であり、現在もその活動を続けています。財政難を克服し、現代社会における芸術の役割を模索するその姿は、今後も注目に値します。

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