トール (仮装巡洋艦)

トール（Thor）

トールは、1938年に商船サンタ・クルツとして竣工した後、改装を経てドイツ海軍の仮装巡洋艦となった艦です。第二次世界大戦中、トールはイギリス海軍の通商破壊を目的とした艦艇として活動し、その名を轟かせました。ドイツ海軍内では軍艦10号（Schiff 10）として、イギリス海軍には「Raider-E」（襲撃艦E）という名称で知られていました。

概要と戦績

トールはその生涯において、2回の出撃を行い、合計で22隻、156,000トンの敵艦船を拿捕または撃沈しました。特にその戦闘手法は、敵商船の通信を無効化するために水上偵察機を利用する形が特徴的でした。初回の出撃では、イギリスの仮装巡洋艦と交戦し、2隻を戦闘不能にする戦果を挙げましたが、1942年7月の交戦時には、空中線の切断に失敗し、自らの位置が敵に露見しました。このため、トールは通商破壊戦を一時中止し、日本へ向かうこととなります。戦後、1942年11月30日に横浜港に停泊中、隣接したタンカーの爆発に巻き込まれ沈没しました。この事件は「横浜港ドイツ軍艦爆発事件」として知られています。

艦歴

トールの前身はOldenburg-Portuguesische Lineのバナナ運搬船、サンタ・クルツです。

1回目の出撃

初めての出撃は1940年6月6日のことでした。キールを出航し、ノルウェー海を経由して大西洋へ進出し、ユーゴスラビア船「Vir」に偽装しました。

7月には、アスファルトや機械類を積んだオランダ船「Kertosno」を拿捕し、その後も次々と敵船を襲撃。例えば、英船「Delambra」やベルギー船「Bruges」を沈めるなど、彼女の悪名高き活動が続きました。しかし、イギリス海軍側もこの動きに気づき、艦艦長が逃走を試みた場面も多々ありました。

アルカンタラとの交戦

7月28日にはイギリスの仮装巡洋艦「アルカンタラ」と遭遇し、一時は逃走を図ったものの、交戦に至ります。この戦闘では、284発の砲撃を行い、相手艦に多大な被害を与えましたが、自身も被弾し、少数の死傷者を出しました。

その後も、トールは数隻の敵船に襲いかかり続け、その攻撃の手法を駆使して一時的に通商破壊の成功を収めます。

2回目の出撃

2度目の出撃は1941年11月30日に開始し、艦長にはGünther Gumprichが任命されました。前回の経験を活かし、レーダーによる探知能力も加わりましたが、その航海でも数隻の敵艦を沈める戦果を挙げました。

喪失

しかし、1942年11月30日、横浜港での事故により、タンカーの爆発に巻き込まれ、トールは沈没してしまいました。この事故では多くの乗員が命を失いました。トールの艦歴は短命でしたが、彼女がもたらした影響は第二次世界大戦における海軍戦略において重要なものでした。

結論

トールの物語は、戦争の厳しさとともに、浮き沈みのある海軍戦略を象徴するものです。彼女の行動は多くの船員たちに影響を与え、今もなお、その歴史は語り継がれています。

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