トーンチ・イルキン

トーンチ・イルキン：異国からNFLへ、そして伝説へ

トーンチ・イルキン（Tunç Ali İlkin, 1957年9月23日 - 2021年9月4日）は、トルコ・イスタンブール出身のアメリカンフットボール選手です。ポジションはオフェンシブ・タックル。1980年から1993年までNFLで14シーズンに渡り活躍しました。

生い立ちとアメリカへの移住

イルキンは2歳の時、家族と共にアメリカ合衆国シカゴに移住しました。高校時代からアメリカンフットボールを始め、その才能を開花させます。1975年には、インディアナ州立大学にスポーツ奨学金を得て進学しました。

NFLでの活躍

1980年のNFLドラフト6巡目でピッツバーグ・スティーラーズに指名され、NFL選手としてのキャリアをスタートさせます。スティーラーズでは、1980年から1992年までの13シーズンに渡り、タックルとして177試合に出場しました。 1970年代に黄金時代を築いたスティーラーズでしたが、イルキンの在籍中はチームの低迷期と重なります。チャック・ノールヘッドコーチが指揮した最後の12年間で、チームのプレーオフ出場はわずか3回に留まりました。

1993年、イルキンは2年220万ドルでグリーンベイ・パッカーズに移籍します。この年、パッカーズはレジー・ホワイトやマーク・クレイトンといった大物選手を獲得し、大型補強を行いました。しかし、チームは開幕から5試合で2勝3敗と振るわず、イルキンはシーズン途中に解雇されました。

選手会での活動

イルキンは選手としての活動と並行して、NFL選手会にも深く関わりました。1986年にスティーラーズの代表に就任し、1989年から1994年まではNFL選手会のヴァイス・プレジデントを務めました。

引退後

現役引退後、イルキンは解説者、レポーターとして活動し、スティーラーズ関連番組を中心に、その的確な解説と温かい人柄で人気を博しました。1995年には、ダン・ヒックス、ジム・ドノバンと共にNBCのゲームアナリストを務めました。1998年からは、マイロン・コープ、ビル・ヒルグローブと共にスティーラーズのブロードキャストチームの一員となり、2004年にコープが引退した後は、彼の役割を引き継ぎました。2005年シーズンには、ピッツバーグ・スティーラーズが第40回スーパーボウルに進出し、イルキン自身も初めてスーパーボウルの放送に関わるという、感慨深い経験をしました。また、同じ1980年のドラフトでスティーラーズに入団した元チームメートのクレイグ・ウルフリーと共にサイドラインレポーターを務めたり、地元のラジオ局で番組を持つなど、多岐に渡って活躍しました。

ALSとの闘い、そして永遠の別れ

2020年秋、イルキンは筋萎縮性側索硬化症（ALS）を発症したことを公表しました。2021年6月には、23年間務めた解説者を引退し、同年9月4日、63歳という若さでこの世を去りました。

私生活

1982年4月24日、シャロン・セネフェルドと結婚し、3人の子供を授かりましたが、シャロン夫人は2012年2月6日に癌で亡くなりました。2013年には、カレン・ラファーティと再婚しています。また、かつてはイスラム教徒でしたが、後にキリスト教に改宗しました。

トーンチ・イルキンは、異国の地でアメリカンフットボール選手として成功を収め、引退後も解説者として多くのファンに愛された人物でした。彼の功績と、ALSと闘い抜いた不屈の精神は、これからも多くの人々に語り継がれることでしょう。

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